【参加報告】公共交通の利用促進に向けたキックオフフォーラム②
前半の基調講演・特別講演はこちら
【パネルディスカッション】
パネリスト 高橋はるみ氏(北海道知事)
吉見 宏 氏(北海道大学大学院経済学研究院教授)
島田 修 氏(北海道旅客鉄道株式会社代表取締役社長)
永山 茂 氏(北海道鉄道観光資源研究会代表)
コーディネーター 岸 邦宏氏(北海道大学大学院工学研究院准教授)
[今日のテーマ]
(1) 公共交通の未来に必要なこと
(2) 道民自らが乗る
(3) 道外・海外から利用者を呼び込む
(4) 鉄道の維持や魅力向上のために行動する
(1) 公共交通の未来に必要なこと
吉見:「関心」。
公共交通に関心を持とう、公共交通のあるべき姿、公共交通にどう関われるか、人任せにしない、誰かが行ってくれるのではない、公共交通は社会インフラとして必要です。
島田:「三方良し」。
売り手良し・買い手良し・世間良し、近江商人の言うとおり、公共交通事業者だけ良くてもダメ、お客さまだけ満足するだけでもダメ、地域が活性化することも重要です。
永山:「鉄道旅情」。
鉄道は十分北海道の観光資源になりますので、観光目線が必須だと思っています。
高橋:「オール北海道で考え行動する」。
本協議会の立ち上げ、オール北海道で①自ら乗る ②利便性向上・シームレスにする ③行動する どれが正解・不正解でもありません。
(2)道民自らが乗る
吉見:逆にどうして公共交通に乗らないのかを考えると、クルマと比べて乗継などがあって不便に感じるからです。利便性を高める事例として、富山の例(富山駅での新幹線と路面電車の乗継、ライトレールとフィーダーバスの乗継)サンフランシスコでの公共交通と自転車の例を紹介しますが、日本のパークアンドライドは空き地の活用で、駅と駐車場が遠いことが多くなっています。
永山:「161/179」。物を運ぶことで延びた北海道の鉄路ですが、鉄道がある、あるいは鉄道の何らかの痕跡がある町は161あります。これらを回ることで回遊性を高め利用促進につなげられないかと考えており、観光資源マップを作成しています。
島田:札幌-新千歳空港間の移動手段において快速エアポート号のシェアは約43%ですが、石北線(旭川-網走間)は、特急列車では旭川-北見間が約600名/日(1列車当たり70人強)。普通列車では主に通学生がいる旭川-上川間と北見周辺の利用が多くなっています。土日の普通列車はガラガラなので、「1日散歩きっぷ」を販売している一方で、「ヘルシーウォーキング」は800名が参加する回もあり固定客が多くなっています。
高橋:11/14から1か月間、道庁全体でノーカーデーを実施しましたが、朝ニュースチェックができるなどの好意的な意見が寄せられました。
(3)道外・海外から利用者を呼び込む
吉見:どんな鉄道が楽しいのかという例をご紹介したいと思います。
和歌山電鉄の「たま電車」。通常運行の列車で車内が混雑したりもしますので、地域の協力も欠かせません。
大井川鉄道は大変有名ですが、「トーマス」が大変好評です。SLはキラーコンテンツで維持にはお金も大変かかりますが、通常運行していると元近鉄の「ビスターカー」のような中古車両は費用を抑えられて人気もあります。また、地元の人々が清掃や混雑時の誘導などにおいて協力されています。
わたらせ渓谷鉄道ではテープにより観光案内を流しているので、地元の方はうんざりしているかもしれませんが、このあたりも地域の協力が欠かせないことだと思います。
島田:リゾート列車はピーク時に5編成ありましたが、スキー列車の顧客がスキーバスに取って変わられてから、夏はラベンダー、秋は紅葉、冬は流氷観光に活用し好評を得てまいりました。
また、釧路湿原ノロッコ号は釧網線が釧路湿原の中を通る唯一の交通機関ですので大変好評を得ているほか、ラッピングした流氷物語号やライラック号、車内に動物チェアの撮影場所を設けたライラック旭山動物園号も人気です。
インバウンド向けの北海道レールパスの利用が急拡大していますが、受け入れ態勢の強化と合わせてさらなる販売拡大を目指しています。
永山:道南いさりび鉄道(以下、いさ鉄)の「ながまれ号」は鉄旅OF THE YEARでグランプリを受賞しました。前年はJR九州の「ななつ星」です。お金はありませんでしたが、地域のみなさんと知恵を出し合って作りました。
台湾は文化創造と称して文化と歴史を結びつけていますが、北海道の最大の弱点は古くなるとすぐに捨ててしまうことです。鉄道を経済価値だけで見るのではなく、文化創造という目線で見ると展望が拓けてくると考えています。
そして、釧網線は日本屈指の絶景鉄道ですので、全世界から旅客を呼び込みたいと思っています。
高橋:私も「ながまれ号」に乗りましたが、地元のおもてなしにとても感動しました。道庁では、昨年、道東・道北で観光列車とバスを組み合わせたモニターツアーを実施し好評を博しました。
そして、12月24日に「復興クリスマストレイン」(富良野→旭川→稚内)を運行し、胆振東部地震で被災地の子どもたちを招待し、インバウンドの方々との交流を深めていければと思っています。
(4)鉄道の維持や魅力向上のために行動する
[事例紹介] 事業者と地域の連携事例について
水元:①JR×沿線地域-花咲線の減速運転・沿線案内等
②いさ鉄×地域-駅や車内での地域行事の実施等
③網走バス×地域-飲食店等の割引クーポン付の乗り放題パスポートの発行
吉見:観光客の取り込みにおいて地元全体でいろんな人を巻き込むことは、地域によってレベル感が違うと思っていますが、お客様に来ていただく取組において今の仕組みで難しいのであれば、場合によっては法律を変えるアプローチも必要かもしれません。また、この協議会が地域のみなさんをつなげていく役割があるのではないかと思います。
まとめ
島田:このように鉄道に心を持ち、応援してくださる場を創っていただいたことに感謝申し上げます。
昨年、サービス向上のために行ったアンケート調査(800名)の結果においてJRの利用は、札幌圏では月1回が53%で日常的な利用は3割くらい。北海道全体では月1回が38%で日常的な利用は15%くらいでした。
こういった状況の中、鉄道の魅力向上・維持のために、オール北海道で行動していただける中で、事業者としての心構えとしては以下の2点です。
①さらなる輸送サービスの改善に取り組み、もっとご利用していただけるようにします。
②地域と一体となった取組み、点から線・面への観光に取組み、観光列車の取組みを再開します。
高橋:公共交通を大切に守り育てるという意識を醸成したいと改めて感じました。
もっと気軽に公共交通に乗って頂ける仕掛けを考えていきたいですし、観光客数をもっと増やしていかないといけないと思っています。また、北海道レールパスの販売促進のプロモーションも検討しているところです。
地域の人たちと手をしっかり携えて取り組んでいければと思っていますが、500万人×4,000円=200億円増収で全て解決します。
行動宣言(全員起立・唱和)
- みんなで乗って、未来を変えよう!