【参加報告】北海道の交通を考える連続セミナー 第2回 鉄道と地域交通②

【参加報告】北海道の交通を考える連続セミナー 第2回 鉄道と地域交通① (基調講演)からの続きです。

報 告
1「当社の現状と北海道における課題」
戸川達雄氏(北海道旅客鉄道株式会社
民営化時は、新車を投入し札幌を中心とした鉄道網を築いていこうという意気込みでしたが、今日の状況に至ったことについては、経営環境の変化についていけなかったことに尽きると思っています。

鉄道運輸収入等の推移としては、経営安定基金運用益が半分以下まで減少し赤字を補てんすることになっていないことに加え、削減させていた修繕費や設備投資は本来増やすべきところでしたので、現在は増やしています。鉄道収入は平成8年をピークに減少し、近年、安全重視のためにコストをしっかりかけるようにしたために、収支が大幅に悪化しています。

高規格道路の延伸により輸送密度が大きく落ち込みましたが、元々利用者の少なかったところが更に少なくなった一方で、札幌圏の利用者は増加しています。従前は全ての線区を維持していかなければご迷惑をおかけしてしまうという考えの下、一部の線区においては安全のためのコストを極限まで削減し何とか凌いできました。

しかし、その結果が事故の多発につながったため、安全のためのコストを削減しない方向へ転換することにしましたが、これにより全ての線区を単独で維持できないこととなりました。そのため、単独で維持できない線区については、維持の方法について地域のみなさまとご相談させていただいている状況です。

国鉄時代は輸送密度(利用者全員が起点~終点まで利用したと仮定した場合の1日平均)4,000人未満がバス転換の基準でしたが、現在200人未満の3線区も運行している状況で、営業係数(100円の収益を得るためにかかる費用)は1,000円を超えている線区が7線区あります。だからといって、単純に赤字が大きいからやめるというようには考えておりまぜんが、本当に鉄道が必要なのか、また、鉄道が必要であったとしても当社単独では維持できないのが現状です。鉄道とバスを比較するとバスのコストが低いことに加え、トンネルなどの土木構造物の老朽化が進んでおり今後さらに修繕費が嵩んでくるとともに、線路の除雪作業には機械でできない部分があるため多くの人手がかかっています。

弊社としては、経営の自立化を図っていくためにも、輸送密度の低い線区を中心に輸送手段や運営方法の見直しを行っていきますが、地域のみなさまのご理解を得た上で、地域にとって望ましい交通の実現に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。

2「北海道の鉄道・バス交通の現状」
佐藤秀典氏(国土交通省北海道運輸局
北海道の公共交通が今日の状況に至ったのかについてお話しさせていただきます。

北海道の人口は平成11年の570万人をピークに減少していますが、かつて4,000km以上あった道内の鉄道は現在では約2,500kmまで減少、国鉄時代に約1.4億人だった輸送人員は民営化後サービス向上により増加に転じてきました。しかし、輸送人員が増えたといっても札幌都市圏などの利用に留まり、一人当たりの単価が少ないための収益性が低い状況となっています。その一方、軌道(路面電車)(札幌市・函館市)と札幌市営地下鉄の輸送人員は伸びており、鉄軌道全体としてみると増加したといえます。

乗合バスは、ピーク(資料上は昭和45年)時の輸送人員は約6億3千万人で、現在は約1億9千万人と大きく減っていますが、これは全国的な状況です。

鉄道と乗合バスの輸送人員を合算しピーク時と現在を比較すると3億人の差があります。ハイヤー、タクシーにおいても2億人の差が生まれており、鉄道・バスと合わせると5億人以上の差があり、この需要はどこに行ったのかをお考えいただきいと思っていますが、いろいろな要素はあるものの、その大きな要因は自家用自動車の増加と道路の延伸と考えられます。

これを踏まえて、行政としては公共交通からクルマに向かっていった流れを逆にさせようとモビリティ・マネジメントに取組んでまいりました。これは、過度な自動車依存に陥らず適切に公共交通を利用してもらえるように促していくもので、例えば高齢化した際の移動手段、あるいは環境に配慮した移動手段として、公共交通を選択してもらえるようなコミュニケーションを行っていくものです。この他にも、公共交通の利便性向上につながる施策や公共交通のないところにおいては自家用有償運送などへの支援も行っています。

(文責:松本公洋)※ボランティアスタッフの協力を得て作成。

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