道新ホール入口

道新ホール入口

道新フォーラム「地域の鉄道はどうあるべきか」(2017年5月15日(月)道新ホール)に参加してきましたので、そのご報告です。

なお、2017年5月20日の道新朝刊に詳報版が掲載されるとのことです。
(ホール内の写真撮影が原則禁止とのことで、議論の様子がわかる写真はありません)

 

 

 

 

 

 

配布資料の表紙

配布資料の表紙

第1部 基調講演「鉄道の値打ちを考える」

講師:藻谷浩介氏(日本総合研究所主席研究員)

■ポイント
・日本の議論は、古い考えや感覚で議論されていることが多く、正確な数字に基づいて話合われていない。
・道路維持もお金がかかり、道路(有料区間を除く)は100%公金、鉄道は原則公金0%で、バランスが悪い。ガソリン税の1%でも鉄道に回すべきである。
・鉄道復権は世界の先進国の流れであり、日本の地方都市だけが喜んで鉄道を廃止している。
・インバウンド(訪日外国人)は、ツアー客よりも個人で列車移動している人の方が、消費する額が大きい。

 

 

■要旨
私は鉄道ファンなので、本来こういう場にはふさわしくないが、今日は銀行員・コンサルタントの立場でお話します。
北海道の人は、全国一、物事を他人事にしか考えられない県民性を持っていると思っていますが、ものの“値打ち”は他人が考えるものであって、自分で価値を決めるものではありません。
日本の議論は、公表されている「数字」を基にせず、昔の感覚のままで議論しています。例えば、この30年間で殺人事件は減っていますが、なんとなく増えていると思っている人が多くいます。
それと同じく、赤字の鉄道は良くないので「廃止せよ!」という人がいますが、それならば、札幌市の地下鉄・市電を含め、北海道からすべての鉄道が消えることになります。

①鉄道と道路
北海道の交通で、一番税金がかかっているのは道路(有料区間以外)です。例えば、JRの維持困難路線のひとつ留萌線(深川~留萌間)を例にすると、同線に平行している留萌自動車道は大赤字で、留萌線の方がはるかに赤字額が小さいですし、廃止されたふるさと銀河線(池田~北見)の赤字額4億円は、同区間の高規格道路維持費の何十分の1です。

〔線路と道路の維持費〕
●線路(JR北海道)-年間314億円/年。
→ 1メートル当たり1.2万円
●道路(※NEXCO東日本)は、119億円/年(料金収入でカバー)
→ 1メートル当たり1.7万円
(※講演ではJH(日本道路公団)と称されていた)

この違いは、面積差(線路の方が幅が狭い)にあります。
一方、道路の費用を予算ベースでみますと、
●北海道開発局1,867億円
●北海道    1,120億円
●市町村    (不明)

おそらく合計3,000億円程度はかかっているはずですので、鉄道の10倍も維持費がかかっていることになります。
また、使われていない道路はたくさんありますし、ガソリン税の1%でも鉄道に回すべきです。
鉄道復権は世界の先進国の流れであり、日本の地方都市だけが喜んで鉄道を廃止しています。

②鉄道とまちづくり
車しか使えない地域は大変です。歩行者によるにぎわいを失うと経済的活力も失われますが、道内の典型例は釧路市です。
本当にお金のない国で、もし鉄道と道路が平行して走っているとしたら、鉄道を残す方が合理的ですが、夕張市の場合は、駅のそばに公共施設(病院・高校等)を配置しないまちづくりをしてきたため、鉄道を残すことが非合理的になりました。

③インバウンド(訪日外国人)
外国人ほど列車を利用し、消費単価が高い傾向にあります。(ツアーバス利用者の消費単価は低い)従って、昨夏の水害で石勝線が寸断された際は、十勝圏へのインバウンド入込数が7割も減りました。

③高齢化
道内では、札幌市以外は大変だとよく言いますが、実は、札幌市の方が高齢化が著しくてもっと大変です。逆に、地方では既に“高齢化が終わり”、若年層が増え始めている所が多数あります。(例として、西興部村、ニセコ町の年齢人口を紹介)
一方、首都圏(一都三県)でも労働者人口が減って高齢者が増えてきていますので、JR東日本では利用者数が減少している路線と、インバウンドが増えたことで利用者数が変わらない路線とがあります。ただ、首都圏の高齢者は、駅に近い物件に住み始めているので、駅からの距離によって地価に大きな差を生んでいます。

 

配布資料の2~3ページ

配布資料の2~3ページ

 

第2部 パネルディスカッション
パネリスト:藻谷浩介氏(日本総合研究所主席研究員)
高橋はるみ氏(北海道知事)
棚野隆夫氏(北海道町村会長、白糠町長)
石崎仁志氏(北海道運輸局長)
島田修氏(JR北海道http://www.jrhokkaido.co.jp/社長)
コーディネーター:小磯修二氏(前釧路公立大学長)

 

 

島田氏:(一連の問題の背景について)
1.人口減(さらなる利用者減)、2.経営問題(赤字事業を聖域にできない)
当社は、このまま何もしなければ3年で資金ショートしてしまいます。鉄道はバスと異なりインフラも全て自前で維持しなくてはなりません。高速道路も30年前と比べて6.5倍に伸びました。
維持困難路線11線区のうち8線区は、何とか鉄道として維持していきたいと考えています。このままでは路線を維持できないので、増収策や経費削減策などについても地域のみなさんと話し合っていきたいと思っています。また、地域のみなさんと合意形成を経て、路線毎ごとの活性化再生計画を作っていきたいと考えています。

棚野氏:JR北海道から説明を受けた際、①戸惑い、②違和感、③慎重に考えなければとの3点が思い浮かびました。
①戸惑い-民営化後、三島会社の中で北海道はとくに厳しいが、国、JRで協議したというと認識があったので、なんとなくなんとかなると思っていました。適宜相談があればまだわかりますが、30年経って、いきなり話が出てきたと感じました。
②違和感-人口減、高速道路延伸、安定基金の運用益減は、3つとも国の責任が内包されています。なぜ、JRは今まで、自治体、道民に働きかけてこなかったのでしょうか。
③慎重に考えなければならない-JRからは、維持困難路線に対し、バス転換、上下分離が示されているが、いずれの案に対しても沿線自治体にそのような力はありません。従って、JRと話し合っても無理ではないかと思っていますし、北海道は22府県と同等の面積があり、JR北海道1社でカバーするのには無理があります。道が自治体の意見を受け止めて、国に働きかけて欲しいと考えています。

高橋氏:昨年11月の発表を受けて、多くの道民が暗い気持ちになったと思っています。道庁では、北海道大学の岸先生を座長にした鉄道ネットワーキングチームの報告をスタートラインにしたところです。
JR北海道は民間企業ではありますが、株式の保有や社長の任命は国が関与していますので、国に働き掛けていきます。

石崎氏:全国的に公共交通の利用者が減少し、バスを含めて廃止が相次いでいます。国としては、まちづくりとの連携や、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に基づいて支援(例:富山市、北近畿タンゴ鉄道)を行っているところです。

小磯氏:もう少し掘り下げていきます。
30年前の分割民営化のスキームに問題があるのでしょうか? また、欧州は上下分離方式ですが、北海道はこのままで良いのでしょうか?

藻谷氏:民営化時に、国鉄の赤字は全て国鉄清算事業団に回して処理され、後は「各社が自分たちで頑張れよ」ということで、三島会社(北海道、四国、九州)には経営安定基金が用意されました。
しかし、マイナス金利で同基金の運用益が減り、約束通りの金利を得られませんでした。従って、仮に乗客が減らなかったとしても赤字です。
海外では公共交通は税金によって成り立つとされています。一方、日本は民間企業として成り立つようになり、他の国より赤字が少ないですが、他の国では道路予算を削って線路に金を回しています。

石崎氏:分割民営化にあたっては、鉄道の旅客流動の状況から自然な地域分割を行いました。利用者減は、人口減少、マイカーの普及が大きな要因であって、民営化時に廃止対象とした(※)輸送密度4,000人未満の線区が、現在では3/4を占めています。
また、国も経営安定基金の積み増しや設備更新などの費用を合計で約6,800億円支援しています。
現在、国が線路などの鉄道インフラを保有している事例はなく、老朽化した赤字の線路を保有することは税金の補てんが必要ですが、そのための国民理解が得られません。

※旅客営業キロ1km当たりの1日平均旅客輸送人員(線区輸送人キロ÷営業キロ÷日数)

高橋氏:あと3年でJR北海道は資金ショートするという現実があります。民営化の評価も大事ですが、道民目線で考えなければなりません。道路予算を削減して鉄道に回すのもひとつのアイディアですが、実現可能性が低いです。このまま放ってはおけないので、もっと実現可能性のあるものを行っていきます。

棚野氏:上下分離案については、JR北海道が示す地方自治体が下の部分(インフラ)を所有することは無理です。下を国が維持管理する上下分離が必要です。
明治以降、北海道の鉄道は物を運ぶために敷設され、それに人がついてきました。大地の活性化は鉄道と共にありました。農林水産業や鉄道は公共事業でしたが、北海道の第一次開拓期は終わったと思っています。維持困難線区は、道北・道東に集中していますが、これからは物資輸送の面から国のためにも必要な路線であるはずです。
また、鉄道は物流の要ですが、鉄道だけスキームが違います。鉄道、道路、空港、港湾は国が管理すべきです。鉄道を全て残せとは言いませんが、必要な路線は残して、国が管理すべきです。

小磯氏:JR北海道が他のJR各社と差が開いた経緯についてお聞きします。

島田氏:当社は、既に8割の職員がJRになってからの採用者で、公社(国鉄)や全国一元サービスなど、いわゆる“親方日の丸”の問題は解消されたと考えています。国鉄時代の国が何とかしてくれるという体質から脱却し、お客様と向き合い、現場でどんどん変えていくことができるようになり、トータルで考えるとサービスは改善してきたと自負しています。
道内各方面の高速化、ならびに、札幌圏の輸送強化に加え、開発関連事業など、経営も多角化してきました。人員も7,000人に減り(※JR北海道発足当時は約13,000人)、総人件費も830億円から480億円になりました。しかし、安全対策を踏み外したのはご存知のとおりです。
民営化のスキームが悪いのではなく、時代に合わせて変化していくべきだったし、関連事業ももっと伸ばせたかもしれないと思っています。
北海道の人口は九州の半分で条件が違いますが、JR九州さんは、関連事業115億円の利益で鉄道の赤字を穴埋めしています。一方、当社の関連事業の利益は運用益と合わせても140億円なので、鉄道の赤字を穴埋めできていません。
(鉄道を)「どうやって使っていくか」という議論が必要です。

小磯氏:日本の鉄道は採算性が前提です。経済規模のある地域では、大手私鉄やJRも経営状態が良いが、それ以外の地域や欧州では成り立ちません。この問題は、JR北海道ひとつで解決できるものではなく、みんなで議論する必要があります。
次はどうつなげていくかを考えなくてはなりませんが、2/28の国会の予算委員会で、麻生大臣が「JR北海道の利用者は新宿駅1つ分の利用者しかない。そもそも経営が無理な話で、考え方を整理し直す必要がある」と発言されました。これは、小手先の手法ではダメで、政治家の良識による発言だと思っています。そのための戦略としては、地域からもっと声をあげる必要があります。
政策の歴史的背景を紐解くと、自分は役人をやっていた際、国鉄民営化に伴い路線をスリム化するために特定地方交通路線の廃止(約1,500km)にかかわりました。既に廃止は決まっていたことでしたが、とてもつらい仕事でした。とくに、100km超の長大路線は残したかったです。
30年前にも人が乗っていない路線に対して、どういう使い方があるのかという議論がされたことがあります。本日このようなフォーラムは、議論の場として大事な場であると思っています。

(文責:松本)

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