2018 年10月19日、北星学園大学図書館棟にて「北海道の交通を考える連続セミナー 第2回 鉄道と地域交通」(共催:日本福祉のまちづくり学会事業委員会・北海道支部、北星学園大学経済学部、中央大学研究開発機構(公財)交通エコロジー・モビリティ財団)が開催されました。

 

今日のテーマ
・北海道の交通で何が問題になっているかという現状の把握
・問題を解決するためには、今後交通はどのようにすればよいのか
・新たな交通システムが生まれてくる中で、北海道はどのように対応していくのか

 


【基調講演】
「鉄道の路線存廃問題を経て北海道の将来の交通をどのようにつくっていくべきか」岸 邦宏氏(北海道大学工学研究院
鉄道ネットワークワーキングチームがまとめた「6つの観点による鉄道網のあり方」において、最も大きな反発があったものは、「5 収支が極めて厳しい線区」についてでした。鉄道がなくなることは地域にとって衝撃的なことなのでわかるのですが、地域のみなさんがJRを利用していない状況で、本当に鉄道が、鉄道が最適な交通として必要なのでしょうか。

国鉄民営化の責任などは別に議論するとして、昨年は、「地域の現状をきちんと捉えた上で、地域交通のあり方を考えていくべきものではないか」ということを訴えるために、道内各地を回っておりました。

鉄道が無くなれば地域の衰退というのは本当でしょうか。そこに、将来の産業構造や地域ビジョンがあって、そこに鉄道がどう位置付けられているかを考えている地域はありませんでした。鉄道を活かしたまちづくりをしていくかなどの地域の合意形成をどう進めていくかは、地域の役割として考えていくべきことではないでしょうか。

幹線が重要なことはもちろんですが、一方で観光のために鉄道が必要だという声をよく聞きました。地域の人が「観光列車を走らせばいい」というのは、地域としては何もやらないということです。それよりも、公共交通で道内を回る人が観光地に行くために、JRを降りたあと公共交通で回ってもらえるようにすることが、観光にとって鉄道が必要ということだと思いますし、JRと地域交通の連携は、地元がやっていくべきことではないかと思います。

また、サービスレベル(運賃・本数等)、コスト、利用者数などを数値で示す一方で、将来の目標値を掲げ、住民に最適な公共交通を考えてもらうべきでいかということもお話ししてきました。

最後は利用促進についてですが、JRへの具体的な要望や提案は地域で考えるべきだと思っています。ある町で「人口が減少するのだから、利用者を増やせない」と言われたことがありますが、90%が車を利用している地域では、車から鉄道利用へ移行すれば鉄道の利用者は増えます。また、地元負担がないと鉄道を残せません。運賃負担もそうですが、仮にJRの赤字が200億円、道民が500万人とするるならば、年間1人4,000円の利用で収支が合うことになります。

【北海道の交通】
北海道はあまりにも広いので、交通を以下の3つに分けて考えています。
① 幹線交通-鉄道、航空路、都市間バス、高規格道路
② 広域交通-鉄道、都市間バス、乗合バス(隣町の病院行バスなど)、離島航路
③ 市町村内交通-乗合バス、タクシー、デマンド型交通
それぞれが有機的につながっていることが重要で、幹線交通は利用方法により役割分担や共存・共栄が可能と考えています。
北海道の将来を見据えた鉄道網のあり方についての取りまとめにあたっては、座長総括として「地域の交通を維持するという点においてはどの地域も同じだ」というメッセージを出しました。

※「鉄道ネットワークワーキングチーム フォローアップ会議」の各線区の方向性
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/300113tetsudouNW.htm

北海道交通政策総合指針において、短期的に今やならければならない5つの重点戦略(①インバウンド加速化戦略 ②国際物流拡大戦略 ③シームレス交通戦略 ④地域を支える人・モノ輸送戦略 ⑤災害に強い交通戦略)において、特に重要と考えているのが③です。

〔参考事例〕
海外-ドイツの運輸連合
・地域内の事業者が連合体を組織し、公共交通の運営を一元的に管理
・行政が音頭を取り、大きな事業者が、鉄道とバスを一体としてそれぞれの役割分担を図る。
→共通運賃制度、ストレスの少ない乗継ぎの実践(バリアフリー、ダイヤ調整)
北海道でもできないかと考えています。

国内-富山ライトレール(岩瀬浜駅)、富山駅、金沢駅、せせらぎバスセンター

十勝において、3か年計画で行っているシームレス化に向けた取組みを基に、運輸連合を目指していきたいと思っています。北海道ではシームレス化を以前から目指していたものの進んでいなかったのですが、JR問題に端を発するシームレス交通への取組みは最後のチャンスだと思っています。十勝圏で実現できると、幹線、広域、市町村交通が各拠点でスムーズにつながる北海道のモデル地区になります。

北海道の交通ネットワークは、3つの圏域で考える構想(道東、道央・道南、道北(札幌を中心に放射型))を持っています。また、駅からの2次交通は専用のバスなどではなく、日常走っている地域の路線バスを使ってもらえるようにすることが重要だという考えを持っています。
鉄道路線存廃問題から北海道の将来交通をどう考えるかについては、道や市町村による高額な財政支援は難しいです。一方、新幹線札幌延伸を見据えて、鉄道だけではないシームレスな交通体系をどう作っていくのかを今考えなくてはなりませんし、地域が自発的にするべきことをしていかないと取り残されるという危機感を持つ必要があります。

〔フロアからの質問〕
質問者:そもそも鉄道が事業として成り立たない中で、JR北海道は企業としての存在価値はあるのでしょうか?

岸:経営の問題と交通のあり方が混同されることが多く、分割民営化も誰かが総括しなければならないと思っていますが、民営化は当時の判断で、現在はこのような状況だから国としても考えて欲しいというスタンスです。ただ、ビジネスとしてどうかと問われれば価値はないのかもしれませんが、我々は何らかの方法で残したいと思っています。

秋山:民営化は6つに分割したことが間違いだと思っています。北海道は東日本と一体とするなどが良く、労働組合の問題が背景にあったのかと思いますが、地域のモビリティのことを考えずに分割化したことが、今日に至る原因のひとつだと思っています。2分割のNTTの方がはるかに良かったと思っています。(つづく)

(文責:松本公洋)※ボランティアスタッフの協力を得て作成。