【参加報告】「地域公共交通シンポジウムin北海道」
2020年2月4日(火)札幌ビューホテル大通公園にて「地域公共交通シンポジウムin北海道」が開催されました。
話題提供と講演では、「若者の外出率の現象が顕著」となっていることを踏まえ、「MaaS(Mobility as a Service)によって移動の総量を増やしていく」(国土交通省)、実験が開始された十勝型MaaSの紹介とともに、受け身の地域や事業者は、「やる気のある地域に差をつけられMaaSは展開できない」(北大・岸准教授)といった点などが述べられました。
事例紹介では、トヨタ自動車(株)との協業によるサービスアプリ「my route」やオンデマンドバス「のるーと」について(西鉄(株))、釧網線を軸としたひがし北海道MaaSの導入により駅から点在している観光地に行けるようになった(WILLER(株))、厚真町で実証実験を行っている「乗りたい人」と「乗せれる人」をつなぐサービス「MEETS」について(マドラー(株))紹介されました。
【パネルディスカッション】~地域を生かす『MaaS(Mobility as a Service)』の可能性~
■パネリスト
緒方 伸州 氏(西日本鉄道(株)都市開発事業本部まちづくり推進部 課長)
村瀬 茂高 氏(WILLER(株) 代表取締役)
成田 智哉 氏(マドラー(株) 代表取締役)
■コーディネーター
岸 邦宏 氏(北海道大学大学院工学研究院 准教授)
テーマ① 地域を活性化させるためにMaaSをどう活用していくか?
緒方:トヨタ自動車(株)の未来プロジェクト室からコンタクトがあって始めましたが、MaaSという言葉にのっかることでJR九州などの競合他社と連携するきっかけにもなりました。
村瀬:今まで鉄道とバスの連携が難しかったことと、地域の魅力が点在しているような地域では、なかなか行くことができなかった場所でも行けるようになり、それによってCity Valueが上がり、住んでみたい町へとつながっていくのではないかと思っています。
成田:ローカル地域はゆっくりな移動でいいので、例えば車内で特産物を売ることで、モビリティに付加価値をつけるとともに1次産業へのリスペクトも生まれると思っています。
土田:MaaSを言い訳にして、縮む運輸市場のパイを増やすことになればと思っていますし、地域の乗り物を総動員して、最適なネットワークを作っていくことを法改正でも促していきたいと思っています。
(個別の質問)
緒方さんへ:① 福岡の地域特性について ② 連携相手のトヨタの企業風土について
① 新しいもの好き/まつり好き/熱しやすく冷めやすい
② トヨタは明確なビジョンがあったので、当社の社長も「なんだかわからないがやらないかん」という風に始めることができました。
村瀬さんへ:道東の観光地では駐車場にレンタカーがいっぱい停まっている中で、かなりのチャレンジングだと思うのですが、ターゲットはどこだったのでしょうか?
本来はインバウンドなのでしょうが、レンタカーですべて回ろうとすると大変なので、結果的には40~50代の女性と夫婦が多かったです。
成田さんへ:厚真町ならではのことはありますか?
道路が少ないので、ウーバーのようなマッチングアプリは不要でした。また、アプリは住民が素敵な人生を送るためのツールで、ぬくもりあるテクノロジーと呼んでいます。
土田さんへ:MaaSが法改正や人手不足にどう切り込んでいけますか?
MaaSが人手不足を解消できるわけではないですが、AIでダイヤ改正などの効率化で供給をコントロールできる可能性があります。
テーマ②:交通事業者・自治体など、地域関係者が果たす役割とは何か
緒方:地域に住みたい、住んでみたいと思わせることは、事業者も行政も一緒。他社との競争は競争として、いかに連携できるかが重要です。
村瀬:ひとつの市の小さな地域の交通をどうするか。買い物・通院など、80%くらいの用事は同一地域で事足ります。また、人を乗せるサービスと物を運ぶサービスのニーズを整理する必要があります。
成田:MaaSは独り占めしてはいけないサービスで、競争からどう連携していくかという大チャンスです。
岸:10年・20年やってきた地域公共交通ですが、なかなかうまくいかないというときにMaaSが出てきました。MaaSにはいろいろなものが入ってきて、もうちょっと頑張れるアクションでもあり要素なのかなと思っています。生かさない手はありません。