【参加報告】北海道地域交通研究会~自動運転技術の現状と北海道での実用化の可能性~

2020年2月20日(会場:プレスト1・7ビル)「北海道地域交通研究会~自動運転技術の現状と北海道での実用化の可能性~」(主催:北海道)が開催され、自動運転技術の発展に伴う実用化に向けた事例や取組と北海道での実現性等について講演をお聞きしました。

講演Ⅰ「成長戦略における自動運転の社会実装に向けた取組の加速」

守山 宏道 氏(内閣官房日本経済再生総合事務局 内閣参事官)

内閣参事官 守山 宏道 氏

成長戦略フォローアップ(自動運転)
成長戦略フォローアップにおける自動運転関連では、2020年度中の無人自動運転サービスの実現に向けて地域交通再生の取組を支援し、自動運転のレベル4に向けた制度整備の検討を開始することとしています。2017~8年度にかけて3省庁が国内21の地域で行った自動運転の公道実証プロジェクトでは、初年度は最長14日間だったものが2年度目は同62日間と大幅に日数を伸ばすことができています。

パターン化参照モデル
自動運転サービスの実現には、技術面のモデルとビジネスモデルの確立が必要ですが、技術面においては、「地域移動サービスにおける自動運転導入に向けた走行環境条件の設定のパターン化参照モデル」を策定しています。このモデルでは、実証実験を行った全国36か所のデータを雨や雪などの「環境条件」、右左折、信号の有無などの「道路・地理条件」といった評価項目に車両性能などの技術要素を加味しパターン化することで、地方自治体と自動度運転事業者が導入検討に向けた「共通言語」となることを期待しています。このモデルにおける走行困難な事例のひとつである「積雪により人や対向車がはみ出てきたため停止した」への解決策には、除雪による環境整備に加え、自律型の判断精度の向上などが示されています。

パターン化参照事例のひとつ(永平寺町)

成長戦略フォローアップ(スマモビ・グリスロ)
自動運転の実証から実装への道のりとしては、まだまだ関係省庁間の議論が不十分なこともありますが、事業化も大きな課題となっています。成長戦略フォローアップにおけるスマートモビリティ・チャレンジとグリーンスローモビリティ関連では、国土交通省が新型輸送サービス導入のためのルール整備などを行い、ラストワンマイルの交通を支える電動低速モビリティの実装を50地域で行うことを目指しています。
電動カートや小型電気バスなどが運行するグリーンスローモビリティは、狭隘道路などでバスが走れなかった地域やプチ観光バスなどとして活用されており、松江市(島根県)では団地内の足として社会福祉法人が、福山市(広島県)ではタクシー事業として電動カートを運行し、東京・池袋駅周辺では真っ赤なデザインの「イケバス」が新しい街の顔になりつつあります。

講演Ⅱ「新しいモビリティ社会の展望」

鎌田 実 氏(東京大学大学院新領域創成科人間環境学専攻生活支援分野工学部機械工学科 教授)

鎌田 実 教授

グランドデザイン2050
日本はこれから急激な人口減少時代を迎え、2050年には居住地域の2割が無居住化するとされています。そのような時代になっても両隣にある2つの市をひとつの圏域にして高速交通で結ぶと、現状の都市機能を維持できるのですが、県が異なるとかなり難しいです。

高齢者の事故
高齢者による運転事故は「ハンドル操作の誤り」が一番多いのですが、「ペダルの踏み間違い」は事故の規模が大きく報道でも取り上げられています。予防安全機能のある「サポカー(セーフティ・サポートカー)」はハンドル操作の誤りを防ぐことはできませんし、レーン・キープもできません。
また、免許更新時における認知機能検査はアルツハイマー型認知症の区別はできますが、レビー小体型等の認知症かどうかの判断は難しく、医師は高齢者が免許の更新ができなくなることを恐れ、結果を先延ばしにしているのが現状です。

北海道の事情
北海道は広大な面積を有しているなど特有の事情がありますが、一番高いハードルは「冬季の気象条件」だと思います。ホワイトアウトの時は、高機能なセンサーでも前方を確認するのは無理だからです。東日本大震災で被災したJR気仙沼線BRT(※)で、磁気マーカー方式による自動運転の実証実験が行われましたが、課題はあるものの個人的にはJR北海道の維持困難路線はBRT化も良いのではないかと思っています。
(※)BRT=Bus Rapid Transi(バス高速輸送システム)の略

日本の自動運転
「自動運転はいつ実現するのか?」という質問を必ず受けます。限られたエリアなど、簡単な条件下では今すぐにでも実現可能ですが、どこでも走れる自動運転は巨額なコストがかかるので、現実的に「ほぼ不可能」です。自動運転で全ての課題を解決するのは無理なので「そんなに期待しないこと」が重要です。
自動運転時に何かトラブルが起こった際、運転を自動運転から人間が引き取らなければなりません。国連は引き取る時間を「5秒」や「30秒」と言いましたがどちらも無理がありますし、日本の警察も議会答弁で「直ちに引き取る」と言いましたがそれも無理です。そして、自動車メーカーは高速道路の自動運転からスタートさせたいのですが、元々死亡事故は少ないので死亡事故の減少には寄与しません。
一方、日本の自動運転技術は世界に後れを取っているのではないかという人がいますが、そんなことはありません。自動運転の最初の段階であるレベル3では日本の技術がトップですし、日本の「自動運転の安全技術ガイドライン」は国連も優れていることを認めたので、今後世界の基準になるかもしれません。

究極の自動運転社会実現へのシナリオ

MaaSとグリーンスローモビリティ
MaaS(Mobility as a Service)はヘルシンキでもうまくいっておらず、マイカーからの転換はタクシーになっています。一方、グリーンスローモビリティは単なる移動手段ではなく、乗っている人と地域の人とをつなぐコミュニティ・ツールにもなっています。

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