【参加報告】第11回くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2022①
- 日時/11月19日(土) 13:30~17:00、20日(日) 9:30~12:20
- 会場/東京大学(本郷キャンパス)
・地域公共交通の再構築に向けて
鶴田浩久氏(国土交通省 公共交通・物流政策審議官)
「バス・鉄道の利用者は減少し続ける一方で、乗務員の有効求人倍率は上昇し続けていることが、コロナ渦でさらにあぶりだされた。この流れを変えることと、元気な世の中を創ることは表裏一体と考えている」などと述べ、本フォーラムの幕が明けました。また、来年度には関連する法律の改正を予定しているとのことです。
●セッション1
オープニング・セッション
「みんな」で拡げよう お出かけの和-「競争から協調、そして共創へ」みんなでつくる新たなモビリティサービスとは?-
旅客輸送は乗合バスとタクシーのどちらかで賄うという前提で法体系が整備されているものの、この2つの間に多くのニーズがあるといいます。公共交通以外にも様々な送迎・移動手段があり、「新たに参入されたモビリティサービスの話題を中心に、既存の交通手段を含めてみんなで輸送サービスを創っていけないか考えてみたいと思います」(貞包健一氏 有限会社三ヶ森タクシー代表取締役)
【話題提供】①
サブスクのmobiの現状と今後目指すもの
村瀬茂高氏(WILLER株式会社 代表取締役)
共有交通アプリ「mobi」は、2021年から京丹後市でサービスを開始しました。①半径約2kmの近距離移動、②電話でもすぐ呼べる、③定額で乗り放題といった特徴があります。地方でも都会より便利で快適な移動の提供を目指して事業展開を行い、持続可能なモデルを創ること、1世帯当たりのマイカー保有台数を減らすことなどを目指しています。
【話題提供】②
デマンド交通「チョイソコ」による地域との向き合い方
加藤博巳氏(株式会社アイシン ビジネスプロモーション部部長)
健康増進のための乗り合い送迎サービス「チョイソコ」は、主に高齢者の外出促進に貢献するデマンド型交通ですが、①利用者、エリアスポンサー(地域協賛)、自治体3者による負担で採算性を向上、②異業種と協業して外に出る機会を創出するといった特徴があります。自治体だけに任せると利用者が徐々に減少していきますが、他の業種との協業による取組みにより、利用者に便利なものとわかってもらえればリピートしていただけます。
※札幌市手稲区において「チョイソコていね」の実証運行が行われています。
【話題提供】③
元システム屋がタクシーの「タク放題」にチャレンジした理由
清野吉光氏(一般社団法人静岡TaaS 代表理事)
配車アプリとサブジョブドライバー(副業乗務員)によるマッチングで、実車時間率の向上を目指しています。タクシー会社単独では配車を断っている方が多いのが実態で、共同配車ができれば効率が良くなるのですが進まないので、共同配車の足掛かりとして1社をM&Aし、そこに配車センターを立ち上げました。また、定額乗り放題サービス「タク放題」を開始し、超近距離利用という需要を掘りおこすなどの効果と、利用時間帯の集中と閑散、タクシー会社の縄張り意識などの課題を浮き彫りにしました。
【パネルディスカッション】
<コーディネーター>貞包健一氏(有限会社三ヶ森タクシー 代表取締役)
貞包:チャレンジャーである御三方にどういったきっかけで始めたかをお伺いします。
村瀬:コロナ渦で大きく生活様式が変わっていく中で、新たなコミュニティを創るために外出できる手段が必要だと思ったことと、マイカーに過度に依存せず自由に移動できる社会を創りたいと思ったことがきっかけで、実験ではなく事業化するために事業を行っています。
加藤:元々新規事業企画部のような部署があり、カーナビなどを作っていたことからできるのではないかと思って始め作り込んできました。ですので、最初の頃と今とではだいぶ異なります。
清野:(株)システムオリジンがタクシー業界に育ててもらったこともあり、20周年の時に恩返しをしたいと思ったことがきっかけですが、タクシー産業を付加価値の高い産業に変えていかなくてはいけないと思っていますし、地域全体でプラットホームを作っていきたいと考えています。
貞包:各サービスのセールスポイントについてお話いただきます。
村瀬:デマンド交通をやっていく上で地域に大事な点は3つあります。①地域にどういった移動ニーズがあるのかを把握する、②交通・教育・介護などの縦割りになっている関係機関を横断的にする、③地域のことを自分ごととして考えられる人を増やしていくことです。
加藤:「チョイソコ」には、①地域密着型のサービス、②継続性があることですが、特に住民説明会等の導入までの一連のフォーマットがそろっているので、すぐ立ち上げることが我々の強みです。
清野:「タク放題」は課題になりますが、会員数が目標に1桁足りないことです。会員を増やす上で必要なエリア設定の改善では、各事業者が自社のエリアを食われるのではないかと警戒して難しく、料金設定では10,000円(65歳以上8,000円)で月70回以上乗っている人と高いからやめる人がいて難しいです。来年、静岡Maasと連携して、月払いや回数券等を導入する予定ですが、検証には1年必要と考えています。
貞包:運行をタクシー業者に委託されていますが、自社運行や自動運転を目指しているのでしょうか。
村瀬:自社運行は目指していませんが、自動運転化は必要と考えています。ただ、自動運転化ができる場所は限定的ではないかと考えています。
加藤:当社も自社運行は考えていません。「チョイソコ」を導入する際は地元業者にお願いしてきましたが、これから立ち上げる地域はタクシー会社がないところも多いです。また、自動運転については自社では難しいと思っています。
〔フロアからの質問〕
《質問1》運輸局から「事業者間でもめないように」と言われるかと思います。事前調整ばかりで、話が進まないことが多いのではないでしょうか?
村瀬:デマンド交通の導入にあたっては、福祉や教育など他の分野の様々な声を拾って、移動において何ができていて何ができていないかを整理します。デマンド交通は収益を多様化しないとやっていけないので、他の業種も巻き込むことによりどんなサービスができるかを見える化することで、「何でも反対」といった感情的になることを避け、前に進めることができると考えています。
《質問2》有償・無償にかかわらず、個別対応で遠くの医療機関への送迎など、小規模でビジネスには程遠いけどどうしても必要なサービスがあります。どこも担い手不足ですが、こういうサービスも含めてもらえるのでしょうか?
村瀬:個別輸送はチャーター便等で対応するなど、全体のサービスに組み込みたいと思っています。
加藤:なんとか収支トントンにしてやっていきたいと思っています。例えば、市役所の本庁と支所を巡回している車両など、既存の車両を使い倒すといったことも考えられます。
コーディネーターとパネリストのみなさん(左から)村瀬氏、加藤氏、清野氏
#くらしの足