【参加報告】「高齢者等の移動・外出支援を考えるフォーラムin札幌」(2019/10/11)

10月11日、「高齢者等の移動・外出支援を考えるフォーラムin札幌」(主催:NPO法人 全国移動サービスネットワーク)が開催され、道内外の事例等を踏まえ、移動手段を必要とする意義やさまざまな‟地域の足”のあり方について議論が行われました。

【報告】「北海道内の自家用有償旅客運送や高齢者の移動手段の確保策について」

①竹田 保氏(NPO法人 ホップ障害者地域生活支援センター 代表理事)

最近増えたユニバーサルデザインのタクシーも利用するのは容易ではありません。札幌圏の公共交通機関のバリアフリー化についても長年大きな変化がなく、札幌の福祉有償運送も増えていません。

スライドの一コマ

②高橋修一氏((社福)北海道社会福祉協議会 地域福祉部地域福祉課長)

道内社協の移送サービスの内容には濃淡がありますが、池田町社協は全国的に有名な良い事例となっています。社協としては、今後きめ細かく地域のニーズに即したサービスを提供していきたいと考えています。

道社協の高橋氏

③樋口康弘氏(北海道運輸局 交通政策部計画調整官)

高齢者やインバウンド、過疎地等における移動手段の確保が急務となっており、自動運転の実証実験、ライドシェアなど様々な取組みが行われています。道内の自家用有償旅客運送者は地域によって増減が起きていますが、法改正後、路線運行から区域運行が可能になり、協議次第で観光利用も可能になりました。

いろいろな課題があります

【講演】「自家用有償旅客運送や移動・外出支援のしくみ」

河崎民子氏(NPO法人全国移動サービスネットワーク 副理事長)

移動支援ネット 副理事長の川崎氏

 

いわゆる買物難民が高齢者の場合、転倒や事故のリスクの高まり、医療費や介護費の増加が懸念されます。
一方、高齢ドライバーによる重大事故が後を絶ちませんが、大学の調査によると、運転を止めた人は止めない人と比べて、要介護になる割合が約2倍高くなります。(公共交通や自転車を利用している場合は約1.69倍)

地域の移動手段には様々なものがありますが、これからは許認可登録の不要な互助活動の一環としての移動手段も考えなくてはならないと思っています。その一方、バスをはじめとする公共交通については、他人事とはせず自ら参画し、乗って支えて維持していくことが重要です。兵庫県西宮市のコミュニティバス「ぐるっと生瀬」は、地域住民が運行主体となり、日々の利用状況をホームページで更新しています。

最近、担い手が減少してきた傾向のある福祉有償運送は、利用者が限定され、普通に困っている人を乗せることができないというデメリットがあります。互助活動であれば、登録不要、利用者の制限もありません。しかし、運賃収入がありませんから、社会福祉法人の「地域における公益的な取組」として行われたり、介護保険会計から団体に補助金が入る仕組み等で行われている事例があります。

また、登録不要の形態だからといって、運転者が何もかも持ち出して行わなければならないのではなく、運転者は、任意の謝礼、ガソリン代の実費(おつりの返却を求めない場合も含む)や駐車料金を利用者から受け取ることが可能で、走行距離については合理的な説明ができれば良いとされています。

詳しくはコチラ → 道路運送法における登録又は許可を要しない運送の態様について

よく事故対応のことを質問されることがありますが、事故は起きないようにリスクマネジメントすることが最重要ですから、登録不要の活動でも安全運転講習の受講は必須ですし、当然保険は掛けておくべきです。事故は乗車中より、降車後の方が多いですが、最近では損保ジャパン日本興亜から「移動支援サービス専用自動車保険」が登場しました。
介護予防と健康寿命を延ばすことは、住民にとっても自治体財政にとっても重要な課題です。介助や見守り・外出支援は地域で地産地消するしかありませんし、多様なセクターが協働により、持続する社会を構築できればと思っています。

出典は「食料品アクセス困難マップ」

誰かが何とかしてくれる…ということはありません

どこも担い手不足が深刻…

自発的なお礼は受け取って良いそうです。

講演で紹介された事例

※一部を除き登録不要の事例

1 住民などが独自に運行して外出支援をしている事例

2 市町村の車(保険付・ガソリン付)で住民が運行している事例

3 社会福祉法人の責務となった「地域における公益的な取組」の事例

〈サロン送迎〉

〈買物支援など〉

  • 秦野市  栃窪地区 「とちくぼ買い物クラブ」&「外出支援」

〈買物支援〉

4 介護保険会計から団体に補助金が入る仕組みの事例

5 付添者に補助をする仕組み〈サロン送迎〉

【事例紹介1】「国東市における地域支え合いの活動づくりと移動支援」

宮田太一郎氏(国東市生活支援コーディネーター

地域支え合いの活動を行うにあたり各地域に入って行った説明会では、何度も怒られながら住民同士の支えあい活動を進めていきましたが、あらかじめ半年位前から区長などのキーパーソンと面識を持つことで、説明会で話を聞いてもらう下地を作っておくことがポイントでした。地域の勉強会においては、公民館位の規模で開催し、「口コミ」を中心に集まっていただくとともに、地域の実情にあったわかりやすい内容の講演を行いました。

また、全戸訪問ニーズ調査は、どこかに委託するのではなく、住民が調査員となって調査内容をみんなで考えていく一方で、分析は専門機関と連携して行いました。先進事例の視察においては、県の予算を探して地域のみなさんと行きました。これらの活動を通じて、活動の本格化へとつなげていくことができました。

ここに至るまで相当大変だったようです

【事例紹介2】「訪問型サービスB+Dを活用した生活支援と福祉有償運送」

岩本寿彦氏(白老町 高齢者介護課長)

白老町では、町独自の要件を設け、訪問型サービスBとDを行っています。(実施団体:NPO法人御用聞きわらび)その利用状況は以下のようになっています。

B-公営住宅の多い地区の住民が多い/実人数では「掃除」が多く、延べ人数では「買い物」と「除雪・氷割り」が多い

D-戸建ての多い地区の住民が多い/実人数・延べ人数ともに「通院」、「買い物」の順に多い
通 院…約8割が町内の医療機関(そのうち約7割が町立病院)
買い物…地元スーパーマーケット(2店)が7割以上

星 貢氏(NPO法人 御用聞きわらび 理事長)

介護保険のスキマを埋めたいと思って団体を立ち上げ、困ったことを聞きに行くことから始めました。団体の運営は非常に厳しく、スタッフは高齢者のお小遣い稼ぎ程度の収入しか得られませんが、福祉有償運動の運送料は、自分の役場勤めの経験から生活保護受給者が何とか払えるだろうという金額に設定しました。

御用聞きわらびの理事長 星さん

【パネルディスカッション】

■パネリスト:
宮田太一郎氏(国東市生活支援コーディネーター)
星 貢氏(NPO法人御用聞きわらび 理事長)
岩本寿彦氏(白老町 高齢者介護課長)
河崎民子氏(NPO法人全国移動サービスネットワーク 副理事長)

■コーディネーター:岡田直人氏(北星学園大学 社会福祉学部福祉計画学科 教授)

■アドバイザー:鎌田 実氏(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授)

コーディネーターの岡田氏(左)とアドバイザーの鎌田氏(中央)

鎌田:今日は移動支援がメインではありますが、コミュニティづくりや道路運送法など難しい話もたくさんありました。機械工学を専門としている私の立場からコメントさせていただきます。

基本的にはそれぞれの地域の公共交通に頑張ってほしいと思うもののなかなか難しいので、自家用有償運送においては、交通事業者が反対しなければ認可とし、法律の解釈があいまいな点をはっきりさせることで、認可のハードルが下がりました。交通と福祉の連携を深め、福祉の予算で地域の足を確保していくことも重要だと思っています。

一方、近年は自動運転が話題になっています。北海道では大樹町上士幌町で実証実験が行われましたが、完全無人運転はまだまだ先ですから期待しすぎないほうがいいと思います。

MaaS(Mobility as a Service)のうち観光地型と大都会型は、交通事業者が囲い込み勝手に進むからいいのですが、一番期待しているのは過疎地域でのMaasで、定額制などタクシーをうまく活用することです。島根県大田市で行われているタクシー定額制の実験に期待しているところです。また、ライドシェアには課題が多いですが、自家用有償に頼らざるを得ない地域の地域の足としては重要ですので、法改正に向けての動きがあります。

大事なことは、川崎さんのスライドの最後にあったように、地域の足が地域にいろいろあることは、健康を維持することに良いということです。人とのかかわりがないと身体機能は低下しますので、閉じこもりをなくし外に出ていきたくなる仕掛けや目的を創ることが必要です。それにはいろいろなやり方があるので、最適解を見つけられるようにしたいものです。

参加者との質疑応答

I市社協:白老町さんに訪問型サービスBとDの利用者(特にD)において質問です。

  • 認定チェックリスト以外の人はどれいくらいいますか?
  • → 相談はあります。本人からよりもケアマネージャーさんからの相談が多いです。

    • 訪問型サービスB・Dを利用したいので、介護認定を受けたいという人はいますか?

    → あります。このサービスを始めてから、移送サービスを受けたいので審査を受ける人が増えてきています。

    星:そもそも介護認定の手続きがわからない人が多く、わらびによく問合せが来ます。

    川崎:山口県防府市はうまくやっている事例で、介護予防で送迎時の相乗りや買い物も行っています。利用者は「チェックリスト該当者」(認定に対して負担の少ない)がほとんどで、要支援1・2は少ないです。

    T町:市町村有償運送の希望者が増えています。事業者が1人なので無理なため、役場も入っています。
    軽自動車と普通自動車各1台で、町外の近隣病院への移送があります。
    町内では、担い手不足と役場依存の部分がありますが、赤字で厳しい状況です。
    このような中、以下について教えてください。

    • ドライバーの確保
    • 対価の平均額
    • 病院送迎への補助の有無

    川崎:①ドライバーを出している社会福祉法人もあります。
    ②データはありませんが、それぞれの団体で設定しています。乗降介助等の運送収入以外の料金を設定しているところもあります。
    ③駅⇔病院の送迎で、自治体と病院が協定を結び、患者以外の地域の人も乗ってよいとしている事例はあります。

    パネルディスカッション

    岡田:①介護保険からお金が出ている事例がありましたが、介護計画等ではどのように盛り込むのでしょうか?
    ②日本ではボランティアを行う際に誰かが介在して、ワンポイントおく方が良いと思うのですが、ボランティアに対するお考えがあればお聞きしたいです。

    川崎:①介護保険は2000年にスタートし、3年ごとに見直しが行われ現在7期目ですが、計画に訪問型サービスBとDを盛り込んでいたところはスムーズでした。神奈川県秦野市の担当課長は、「B・Dは補助を出せるので一番良い。社福への協力要請の場合はあくまでお願いベースので、B・Dの方が実現性が高い」とおっしゃっていました。

    ②21年前に活動を始めたときは白タク扱いでした。世間ばかりでなく、利用者やサービス提供者の家族からも怪しまれました。2003年の小泉改革の特区で許可を受け、2006年に道路運送法が改正されました。いかに、法制度を実態に近づけていくことが重要だと思っていますので、私は、地域課題解決のための手法と実態を調査し、法律をこの実態に近づけることをライフワークにしています。

    岡田:国東市社協さんへお伺いします。
    ① 社協で地域の支えあい活動を始めた理由は何だったのでしょうか? 正直言って、どうしてそこまでやるのかと思いました。
    ② 同意書の守秘義務について、住民のみなさんにどう説明されているのでしょうか?

    宮田:①平成27年に国東市社協でこの活動をスタートしましたが、前年に市の介護保険課から相談を受けました。当時、社協内部では「そんなもんやれるか」といった意見が多かったです。
    私は、もしこの事業を介護保険でお金を出してくれても社協が引き受けないのなら、社協は何のためにあるのかと思い、幹部にそう言ったところ、「お前の勝手にしろ」ということになりました。人材はいないですし、1~2年は何していいかわかりませんでしたが、この事業は今、社協の生命線になっていると言われています。
    ②個人情報を保護しすぎると支えることができませんので、管理はきちんとしますが、取り扱い方は地域のみなさんで考えましょうという形をとっています。

    岡田:行政の中で、訪問型サービスB・Dを実施するか否かの議論はどうだったのでしょうか?

    岩本:私が異動する前に決まっていたことなので詳しくはわかりませんが、当町は高齢化率45%で単身高齢者も多く、在宅支援もギリギリで、わらびさんが従前から支援活動をしているという環境でした。

    星:平成12年に地方分権一括法が施行されて、介護保険の運営が市町村の考え方で進めて良いことになりましたが、条例を作ったこともないので、どこの町も今日の事例のような先進地を頼りに進めていったのが実態だったと思います。
    生活支援が進まない理由としては、介護予防と生活支援は対等であるはずが、介護予防に重きがおかれていて、従来の方法にとらわれすぎていることではないかと思いますし、今の制度では民間が担うには非常に大変すぎて誰も手を上げないということがあると思っています。
    一方で、これからは以下の3つの発想によって変わってほしいという期待を持っています。

    • 現場の発想(現場の把握を行う)
    • 制度の発想(ニーズに合わせた制度を作る)
    • 担い手の発想(担い手がきちんと経営できるようにする)

    鎌田:高齢者の移動が中心になりましたが、移動に困難を感じているユーザーは様々だと思います。社協も含めて自治体が頑張りすぎると、住民は受け身になってしまう懸念がありますので、地域の力を育てることも重要ではないでしょうか。シェア金沢で有名な(社福)佛志園さんは、「共生社会はごちゃまぜの環境を作ることだ」とおっしゃっていました。
    移動サービスだけでは解決しようとすると無理ななので、住居を集約することも必要だと最近思うようになりました。東日本大震災後、仮設住宅に住んでいる人に住み心地を聞いたところ「近所が近いから楽しい」という人もいました。

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