【参加報告】「地域公共交通シンポジウム in 北海道~地域で導き出す最適な地域公共交通体系の形成に向けて~」

12月7日(金)に札幌市内で開催されたシンポジウム(主催:北海道運輸局)の模様です。

【話題提供】 「JR北海道の経営改善について」

(国土交通省鉄道局 鉄道事業課長 石原 大氏)
JR北海道は、平成28年に単独維持困難路線を発表し、厳しい状況に置かれていることに対し、「国としては、JR会社法に基づき役割を果たしていく。補助や融資で合計400億円台を支援しますが、その条件は『快速エアポート』などでしっかり稼ぎ「自立」できるようにすることです」と述べられました。

石原大氏

【基調講演】「地域を支えうる公共交通網の再整備は待ったなし!~前に進むのか?このまま立ち止まり続けるのか?~」 

(名古屋大学大学院環境学研究科 教授 加藤 博和 氏)
(木次線(島根県・広島県)動画「みんな大好き木次線」を映しながら)
全道各地でこういうものを作れたら良いですが、許可などがおりず簡単には作れないでしょう。木次線は危機感からこのように盛り上がっていますが、今春廃止になった三江線はそうはなりませんでした。今日の話しは「立ち止まってないで、先に進みませんか!」に尽きます。

加藤博和氏

■各地の事例

◇木次線と三江線
木次線の沿線は人口が減少し、地味な地域でもあり、あまり知られていませんが、沿線の駅はNPO等に指定管理を行い、駅を見るだけでも楽しいです。動画に流れている曲は、島根大の医学生でシンガーソングライターの女性が作ったものですが、彼女自身も木次線を利用していたそうです。
今夏の西日本豪雨災害で不通となり、私ももうダメかと思いましたが、割と早く復旧しました。沿線の人の熱い思いがあるので、そう簡単には廃線にできないでしょう。木次線沿線の取組は危機感の共有の現れといえます。
廃止になった三江線は、鉄道が地域の人たちの生活ニーズに合っていなかったことや、駅の位置が悪いためパークアンドライドも意味がなく、高速走行もできない上に災害にも弱く、良いところがひとつもない路線でした。廃止を6か月延長し、調査を1年、準備に6か月を充て代替交通を確保しました。

◇上毛電鉄など
上毛電鉄は、群馬県型上下分離で運営され30分ヘッドで運行しています。レンタサイクルがホームにありますが、自転車を電車に乗せることは30年前から行われていました。それでも利用客は減っていますが、何もやらなければもっと減っています。

※このほか、廃止後のレールバイクの利用者が4倍になった神岡鉄道や、関西本線(加太以東)でバスが鉄道の補完を行っている事例を紹介。

 

■「立ち止まっているように見える」=後退

今日はいても立ってもいられずに来ました。‟支援”をしてもらえば一段落しますが、次に困った時はもっとひどくなっているかもしれません。“乗って活性化させる”と言っても、乗るだけでもだめです。他人事ではなく自分事として考えなくてはいけません。使わないのに「鉄道を残せ!」は全くの論外です。
「レールボーナス」という言葉がありますが、鉄道は、速達性・定時運行・大量輸送とぜいたくな交通機関で、金はかかるのに自由度は低いです。北海道の路線は大半が低需要ですが、赤字・黒字だけで判断するのはいけません。「こんなにいいことをしているのに、国が金を出さないのはおかしいでしょ!」と言えるようにすべきです。
鉄道を利用できるのは駅周辺のみなので、福祉の中では“ザルの福祉”といえますが、大きく救えるものでもあります。鉄道をよく理解して長所を伸ばすなど、トリアージ(選別)していかないとよくなりません。そもそも「鉄道を残す」と主張すること自体がおかしいことで、「地域公共交通を充実させるために鉄道を残したい!」と言うのならわかります。鉄道は目的ではなく手段であり、鉄道の採算性はマチ全体の採算性で考え、主体的に守るのは地域自身です。これをきちんとやっていただければ、自ずと道は拓けます。

今回初めて「地域公共交通のあいうえお」を作りました。
あーありがたい(あること自体が)
い-生きがいを作ってもらいもの(健康)
うー運転いらず(安全・安心)
えー縁の下の力持ち(肝心・要)
おーおでかけ・おもてなし
地域公共交通はこれを整備すればできますが、逆にこれができないのは何かがおかしいのです。

公共交通は、誰もが「乗って楽しい」、「降りて楽しい」、「行きたいところに行ける」ことが大事です。地方は病院・学校への足が重要と言われますが、病院は楽しいところではありません。駅を楽しくすることも重要で、そういった努力をしていないところは誰も助ける気になれません。

公共交通活性化再生法の第4条には、地方公共団体の責務として「地域公共交通の活性化及び再生に取り組むよう努めなければならない」と記載されています。
具体的には、
① おでかけを確保するための地域戦略を考える。
② ①を実現させるために必要なネットワークづくりをする。
③ それぞれの路線・サービスが展開できるように支援する。
ことです。

北海道のみなさまが、鉄道網を自らの手に取り戻し、自らが適材適所を考え取捨選択し活かすことで、地域の役に立つ公共交通網を再生させること。その中で、存在意義のある鉄道が残され、そうでない鉄道は地域にあった新しい公共交通に生まれ変わり、持続可能な地域をしっかり支えるありがたい存在にしていくことは、きっとできるはずです。
しかし、今日は昨年と同じことを言っていますので、立ち止まっている状況ですが、立ち止まっていると損で、どんどん悪くなるばかりです。トライ&エラーでいいので、まずは動きましょう。

【事例発表】「地方路線維持の考え方、取組について」

(公益財団法人浜松・浜名湖ツーリズムビューロー 理事・事業本部長 前田 忍 氏(前 大井川鐵道株式会社代表取締役社長))

以前、静内のウェリントンホテルの再生に携わりました。静内駅での「つぶめし弁当」の販売を行ったことがありますが、その後の日高線の運休は商売に影響がありました。

鉄道には新規参入がありません。ハードルが高く、ビジネスにならないからです。従って、今、鉄道があること自体が観光資源になります。

前田忍氏

■大井川鉄道では

大井川鉄道(以下、大鉄)は鉄道業ではなく「総合交通サービス業」です。ホテルは忘れ物が多いですが、従来、忘れ物の送付は着払いでしたが、元払いに変更したところ、お客様に大変喜ばれました。鉄道も同様にしようとしたところ、従業員から大反発がありました。

でも、そうすることによって、お客さまから「また来ます」、「口コミで宣伝します」という手紙がたくさん来ました。

実効策は4つです。適正な収益管理・最適な情報管理・マネジメントの強化・地域との協働です。収益管理においては、従業員とお客様の声から次々とヒット商品を生み出しています。大鉄は特に“鉄っちゃん率の高い”会社ですが、旧型車両を何色にしたら良いかをSNSで発信したり、本線を11時間かけて3往復するツアーを実施したこともあります。

地域との協働にいてですが、大鉄は19駅中15駅ある無人駅の管理を地域の人に行ってもらっています。どう残すか、どうやめるかを議論するなど、何もしなければ始まらないと思います。

パネルディスカッション

パネルディスカッションの様子

〔パネリスト〕
加藤博和氏:名古屋大学大学院環境学研究科 教授
水田洋一氏:北海道網走市
前田 忍氏:公益財団法人浜松・浜名湖ツーリズムビューロー理事・事業本部長(前 大井川鐵道株式会社代表取締役社長)
石原 大 :国土交通省鉄道局鉄道事業課長
〔コーディネーター〕
小磯 修二 氏(元 釧路公立大学学長(一般社団法人地域研究工房 代表理事)

小磯:今日は大変難しいテーマだと思いますが、一歩でも進めるヒントになればと思います。
私は4年前のシンポジウムで「人口減少時代の公共交通」という基調講演をしましたが、阪急電鉄の小林一三氏が沿線開発を行ったように、交通問題は交通だけで解は出せません。
道内の国鉄の地方交通線(輸送密度4,000人未満)においては、全道の鉄路の約4割にあたる1,456kmを廃止しましたが、その地域対策を担当していました。当時、これかだけの距離が廃止になるとは誰も信じていませんでしたが、100㎞以上の長大4線も含めて廃止しました。あれから30年が過ぎました。

今日のテーマは、
①さまざまな主体が公共交通を支える役割は何か
②公共交通を地域で支えるための進め方
③道内外それぞれの視点から見た道内の鉄道への期待

加藤:公共交通活性化再生法どおりに進めるだけではだめです。規制緩和は20年位前から行われていて、住民から「自分たちでやったほうが早いのでは?」と言われることがありましたが、今でも残る住民主導型の交通は、規制緩和によりできました。規制緩和によりバス路線の廃止が増えたのではなく、逆にやめにくくなりました。
地域で必要なことは地域で考えていくことが必要ではないかと思うようになり、2006年に道路運送法が改正され、地域公共交通会議が設置できるようになりました。その後、事業者は地域のニーズをくみ取り、住民はお願いばかりではなく積極的に参画し、自治体は側面支援を行っていくように関連した法律に反映されていきました。
既に取組んでいる地域がありますので、北海道のようななところは旧態依然とした遅れた地域に見られてしまいます。

小磯:自治体に権限がない中で、自治体はどのように交通政策を行えばよいのでしょうか。

加藤:バスについていえば、かなりいろいろなことがやれていますが、その基準は不明確で権限を拡げていくようなイメージでやればいいと思っています。ただ、運輸支局があれもダメ、これもダメと言うようであれば、縮まっていきます。固定観念を解除していくしかないでしょう。
また、地方分権推進委員をやっているので、各地からあがってくる申請を見ますが、ほとんどは元々できることばかりです。もっと、できないことをあげてきて欲しいと思っています。

石原:この10年間、公共交通に関しては地域で色々な取組みができるようになってきましたが、10年後にはもっと浸透してほしいと思っています。
国が制度を整えていても、JR北海道に関する問題について「地域の交通を地域で考える」という点においては、なかなか動いているとは言えません。
7月に発出した監督命令をきっかけにして、地域との対話の機会、行動指針・利用促進を進めてほしいと思っています。

水田:網走市には、単独維持困難線区になっている石北線と釧網線の2路線があり、オホーツク活性化期成会に1市3町で釧網部会を立ち上げました。
単独では維持困難というのは、=廃止したいではなく、このままでは維持できないから地域と話し合いたいということです。鉄道は重要なインフラですが、住民のマイレール意識の醸成が欠かせません。釧網線の利用は高校生が主体ですが、地域の利用だけでは利用増加は無理なので、観光利用の促進に取り組んでいます。
マイレール意識の醸成としては、子どもや保護者向けの列車の乗り方教室、遠足等への運賃補助を(網走~旭川/~釧路間)行うとともに、住民懇談会の開催や市の広報誌にJR特集を組んだりしています。
観光利用の促進としては、釧網線には、国立公園が3つ、国定公園が1つ、世界遺産もあって、釧路湿原の中を走る世界でも類まれな線区であることから、「観光鉄道」として成り立たせるべく、釧路期成会とともに行動しています。今年は、プロポーザルによりウィラーに任せました。「ネイチャーパス」を創設し(9月から延期)釧網線3日間の乗り放題や流氷砕氷船おーろら号のセット乗車券を、11/28から発売しています。
「流氷物語号」の運行に関しては地元団体のMOTレール倶楽部が多大な協力をしてくれていますし、北浜駅にはwi-fiを設置し、訪れた観光客にSNSで発信していただいているところですが、こういった様々な取り組みは基礎自治体だけでは無理です。

小磯:鉄道ファンは重要ですね。

前田:住民向け「方針説明会」を開催し現状を知ってもらいましたが、出された意見に対しては「できる」・「できない」を即決し、決して「検討します」とは言いませんでした。
私鉄の輸送密度は1,500人くらいで、大鉄の輸送密度は1,000人くらいですが、SLの単価が高いので、低くても何とかなっています。しかし、利用割合は、85%が観光、15%が定期利用。95%がSL、残る5%では地域の足とは言えません。そこで、島田市の所管部署を生活安全課から観光部署へ変更してもらいました。
周遊パスポート(1~3日)は、割引率を高くしていますし、掲示することで生ビールを1杯無料にするなどの特典もあります。
その一方、地域の人は乗りませんが、生活に密着させ、駅を身近な存在にしていくなど、地域住民を巻き込んでいくことも重要です。

加藤:大鉄はSLで人が乗っていることと、元々は名鉄グループだったので、市は関与せず、地域とも疎遠になっていきました。大鉄と沿線2市で行っている3者協議は大事なことです。JRも残った路線で、協議をやってこなくてはならなかったはずですが、JR北海道は「カミングアウト」した点については評価できます。
明知鉄道(岐阜県)は、起伏が激しく、迂回するように走る、政治的要素の強い路線です。沿線は女性に人気な「寒天」が名産だったことから、懐石料理寒天列車を運行し好評を博しました。地元の私立高校がスクールバスを出したため利用人数が減少しましたが、元々客単価が低いので、収入面は観光利用でカバーできました。
ところが、地域の人は観光でやっていけているからとそっぽを向くようになりました。地域の人には、気にかけてもらう、協力してもらえる関係が大事です。
また、商工観光課とやるのが一番面白く、交通政策課はつまらないことが多いですが、鉄道を使って何をするのかが重要です。

小磯:摩周湖は年々水質が低下していました。車利用の影響が考えられたため、公共交通で来てもらえるように、道路局のメニューで実証実験を行いました。
アンケートでものすごく反発したのは、札幌などから車で来る通りすがりの人たちでしたが、本当に摩周湖を見たい人というは賛成で、町内での消費効果も大きかったのです。環境にも地域経済にも非常に良い結果が生まれました。
現在もJRと阿寒バスの乗継割引は、弟子屈町の財政負担で実施されています。
欧州では公共交通抜きで環境問題を論議しません。

前田:久しぶりに北海道に来て、外国人の多さに驚きました。調べてみると前年比20%増で、タイ人は84%アップするなど、東南アジアが中心となっています。
私が静内にいた頃は、毎月タイ人から団体の宿泊を受注していました。浴衣、阿波踊り、寿司握り体験、流しそうめんが喜ばれました。
道内にDMOは9個ありますが、いろいろな団体との連携が重要です。例えば、シーニック・バイ・ウェイやサイクリスト関連ですが、鉄道と自転車の親和性は高いです。

加藤:維持困難路線について代替案を考えていますが、釧網線以外はアイデアが浮かびました。例えば、幹線はヨーロッパの小国と似ていますので、スピードアップすれば高速道路が伸びても関係なく勝てます。逆に車より遅かったら、生き残れません。
鉄道が遅い場合、本州では幹線系を高速バス、支線系を鉄道にしている地域もあります。頭を白紙にして実現させていく必要があります。

石原:インバウンドに対して、北海道の満足度を高める必要があります。
広大な北海道は鉄道の果たす役割は大きいです。関東出身で出張であっても北海道に来るだけでわくわくします。北海道の人は北海道の魅力に気付いていません。もっと鉄道を活かせるのではないでしょうか。

水田:釧網線部会は17回会合を開きました。1~2回目は、国鉄民営化などのそもそも論からスタートしましたが、地域で鉄道を残そうという機運が醸成されました。普段、首長同士はじっくり話すことはありませんが、釧網線を盛り上げていこうという熱が上がりました。

小磯:釧網線が世界遺産になれるのではないかという議論をしたことがありますが、パネリストのみなさんからは期待を込めたメッセージを頂戴したと思っています。
公共交通は、地域定住者も重要ですが、観光・インバウンドなどとの交流が特に重要であると考えられますが、その一方で、人口減少と超高齢化は大きな問題です。
経済が縮小していく中で、インバウンドは貴重な存在です。道民の消費額は年間約120万円でインバウンド8人分です。
外から来て消費してくれる金額は、北海道は約7,900億円で、沖縄は北海道の4.7倍の費用をかけて6,900億円。沖縄なみに頑張れば3兆7千億円くらいになります。ということは、ほっといても乗ってもらえるが、頑張ればもっと乗ってもらえるということです。
タテ割りの仕組みは弊害です。道内7空港の民営化は乗降客数の増加が必須で、インバウンド利用を伸ばすという今日の議論と一緒ですが、この対応が個別バラバラに考えられているのは問題です。

(文責:松本公洋)

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