夕張支線がなくなる前に・・・

積極的な廃止

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夕張の位置と廃止される区間

先日、JR石勝線・新夕張~夕張間(夕張支線:5駅 16.1km)について、夕張市長(以下、市長)から“積極的な廃止”が提案されました。この提案は、鉄道を廃止する代わりに、拠点施設の開設と共に持続可能な交通体系を構築すべく、いくつかの条件をもとに同線区を廃止するといったものです。これに関しては、各種報道機関、そのスジの方々が書かれている多数のご意見にほぼ異論のないところです。

さて、JR北海道が8/17に発表した「石勝線(新夕張・夕張間)の鉄道事業廃止について」には、以下の点などが記されていました。

●JR発足時(昭和62年度)と平成27年度の29年間で、同線区の輸送密度が「約1/10に激減」した
●トンネルや鉄橋などの「土木構造物の老朽化が著しい」
●線路に平行してバス(夕鉄バス)が運行しており、列車より本数が多い。

また、8/8に行われた市長のJR北海道島田社長面談後の会見には、以下のことなどが述べられていました。

■JRは毎年1億6千万円の赤字
■夕張支線だけでなく、みんなでどういう形が一番、足を守るために重要なことなのか、知恵や汗を出して考えるべき

特に、2つめの内容は、今の北海道(道庁、各自治体、道民)にとても足りない部分ではないかと思っています。他の地域では絶対廃止反対の声が多い中で、“みんなで持続可能な公共交通を創り出していこう”という姿勢にとても共感できます。(個人的には、鉄路の廃止は寂しいのですが・・・)

人口と便数

ここに至るまでの背景を手薄な手持ち資料などから眺めてみました。
まず、昭和50年7月・JR発足時・現在の時刻表があったので、当時の人口と運行本数を照らし合わせてみました。昭和50年といえば、オイルショックが起こり、旧国鉄の全盛期は過ぎて利用者が下り坂に入って少し経った頃でしょう。

【夕張市の人口】※夕張市HPより
◇昭和50年9月末 51,478人 / 紅葉山(現:新夕張付近)⇔夕張間 22便 + 沼ノ沢⇔夕張間 2便
◇昭和62年9月末 28,596人 / 新夕張⇔夕張間 18便
◇平成28年3月末   9,025人 / 新夕張⇔夕張間 18便(3/25まで)
◇平成28年7月末   8,924人 / 新夕張⇔夕張間 10便

昭和50年7月の時刻表

昭和50年7月の時刻表。区間運転もある

昭和62年4月(JR発足時)の時刻表

昭和62年4月(JR発足時)の時刻表。手稲を1往復する便もある。

現在(平成28年3月26日改正)の時刻表。

現在(平成28年3月26日改正)の時刻表。

 

 

 

 

 

 

※各時刻表はクリックすると拡大されます。

ちなみに最多人口は、昭和35年の116,908人だそうですが、残念ながら当時の時刻表は持ち合わせておらず・・・。
当時は大小合わせて24もの炭鉱があったそうです。(財政再建団体入りは平成7年)

夕張駅ホームにて

夕張駅ホームにて。今とあまり変わらないかと。

市内の人口は、JR発足時と比べて約1/3に減少し、その減少以上にJRの利用者が減ったことをうかがい知ることができます。
その原因は、通学する高校生が減ったことも含めて、いろいろあるのだと思います。

特に国勢調査時の「15~19歳人口」をみると、
昭和60年 2,132人 → 平成22年 286人 とほぼ1/10で、郵送密度の減少幅と同じ・・・。

私・松本が乗車したのは、約20年くらい前に2往復(内1往復は清水沢まで)。21年前の写真(土曜日の午後)では、この線区ではないものの新夕張を出て追分に向かう乗客は私1人。

追分方面の車内

追分方面の車内(東追分付近だったかと・・・)

この人口推移と実態を踏まえると、逆につい最近まで現状の運行本数を維持してきたことに驚いてしまいます。

 

 

エネルギー政策の転換

かつて夕張市内には、旧国鉄のほかに、夕張鉄道(昭和50年廃止)、三菱大夕張鉄道(昭和62年廃止)が運行されており、それぞれ石炭輸送の重責を担っていましたが、石油へのエネルギー転換が進められた昭和40年代から閉山が始まり、平成2年には全ての炭鉱がなくなっています。

北海道は鉄道敷設が早く、夕張のような“石炭輸送”をはじめ、今年12月に廃止される留萌線(留萌-増毛間)は魚(ニシン)の輸送、その他の路線では木材輸送や北方防備等の役割などがありました。
元々、貨物が主流で旅客と合わせて何とかなっていた線区が多かったはずで、昭和50年頃から徐々に貨物の取扱いがなくなった線区では、その後長きにわたって旅客輸送のみが行われていることになります。

JRで夕張に行ってみよう

“衰退”と言ってしまえばはかないものですが、そのような時代背景を踏まえて、今回は、単一自治体内の線区ということもあり、超スムーズに決着がつきました。

一方、過去の鉄道廃止事例をみますと、鉄路が消えると過疎化にさらなる拍車をかけることが懸念されます。
(鉄路があっても過疎化は止まりませんが・・・)
まだ廃止日は確定していませんが、前述の市長会見によれば、最短で平成31年3月とのこと。

この線区に乗ったことのない人、以前乗ったことのある方も、今では運行本数は少なくなってしまいましたが、夕張市の地域振興を兼ねて、この機会に散策されてみてはいかがでしょうか?
札幌周辺からおでかけされる場合は、「一日散歩きっぷ」(おとな2,260円 こども1.130円)がオススメです。

参考までに、駅から徒歩圏内の施設をご紹介します。

「レストランおーやま」 沼ノ沢駅内
http://tabelog.com/hokkaido/A0107/A010704/1005093/

「鹿鳴館」 鹿ノ谷駅から徒歩7分
http://www.yubari-rokumeikan.com/

「レースイの湯」 夕張駅から徒歩1分
http://www.city.yubari.lg.jp/contents/sightseeing/onyoku/

詳しくは、NPO法人ゆうばり観光協会さんへ。

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