【参加報告】「LRT都市サミット札幌2019」②記念講演
サミット翌日11/9(土)に記念講演がカナモトホールで開催され、約500人がゲストの軽快な電車トークに耳を傾けました。
①街歩き研究家 和田哲 トークライブ
「ブラタモリ」(NHK)にも出演されたことから‟ブラサトル“の愛称もある街歩き研究家・和田哲さんは、南22条の電車通沿いで市電と共に育ったことから市電が好きになったそうです。
市電の前身となった馬鉄、1918年開催の北海道博覧会に合わせて開業するはずだった路面電車(当時は民営)の開業日が遅れたことにまつわる話や、札幌の市電が名古屋(名古屋鉄道)から寒冷地向けに改修した中古車両を譲り受けた際、技術スタッフも同行して来たこと、さらに、58年の時を経て札幌で不要になった車両が名鉄に譲渡・活用され、引退後も部分保存がされていることから名古屋とは縁があると語られました。
一方、かつて運行した「親子電車」(2両連結)は、需要に応じて連結・切り離しができて画期的だった反面その作業が大変で、2両運転では3人乗務のため人件費がかさんだこと、急激な人口増加に対応するために非電化で線路を延伸し運行させたディーゼルカーも後の電化により、それぞれ短命に終わったことが紹介されました。
冬の風物詩・ササラ電車についても「子どもの頃、線路沿いに落ちているササラを拾っていた」と和田さん。早朝、ササラのモーター音の違いで雪質や降雪量の見当がついたと言います。市電開業から3年前(2016年)での96年間、雪による全面運休はありませんでしたが、近年ササラで跳ね飛ばせない湿った固まりやすい雪が多くなってきたといいます。また、慶事の際に全国各地で運行される花電車は、札幌では昔、貨物車両を使っていましたが近年はササラ電車を花電車にしていたものの、近年は花電車が運行されていないそうです。
和田さんは「次の100年も札幌が電車の似合うまちであってほしい」と語り、トークライブを閉められました。
②石丸謙二郎 × 村井美樹トークショー
俳優で「世界の車窓から」(テレビ朝日系列)のナレーションでもおなじみの石丸謙二郎さんと女優の村井美樹さん、HTBの鉄道大好きアナウンサー依田英将さんのMCによるトークショーが行われました。
石丸さん・村井さんのおふたりは全国の路面電車の9割以上に乗ったことがあるそうで、京都市太秦にある撮影所の近くを通る嵐電には特に思い入れがあるとのこと。「撮影所とホテルとの行き帰りに乗りますが、地元の人は声をかけにきたりせずにそっとしておいてくれます。また、撮影所最寄り電停の車内放送で『水戸黄門のテーマ』が流れると観光客が大喜びします」と石丸さん。「オバケ電車が走り、私も仮装してオバケになって乗車したことがありますが、オバケは運賃が50円になるんです」と京都市出身でもある村井さんも嵐電について盛り上がりました。
また、おふたりとも前日に札幌市電に乗車され、村井さんは「1日乗車券を使って西4丁目から4回程乗り降りしました。『ポラリス』は優しい車両に造られていましたし、時間外に電車事業所に入れてもらって車両などを見学することもできました。」 一方、石丸さんは「『ポラリス』の展望席に座れてラッキーでしたが立ち席より目線が低くかった。(笑)環状路線はぐるっと回って来れるので安心感があります。ただ、藻岩山ロープウェイが運休していたのが残念でした。」
路面電車の魅力としては、地元の人が乗って来られるので、そのまちの様子を知ることができることや、バスと違って線路があるのでわかりやすいといった点があげられました。富山駅の新幹線からすぐに路面電車に乗り換えられることを引き合いに、札幌もJR札幌駅まで延伸されたら良いといった意見も飛び出しました。
また、石丸さんは世界各地の事例として、メルボルン(豪)の厨房付グルメ列車やカンボジアの線路わきに列車が来ると瞬間的に撤収する商店、列車を高いところから落として廃車にするというジンバブエの‟列車の墓場“なども紹介されたほか、列車は世界で一番安全な場所で世界中の車内で居眠りできる文化があると語られました。
LRTの今後については、「LRTはなくならずに延びていくと思います。まちを鉄道とLRTである程度カバーし、末端部分はLRTからバスに乗り継ぐような交通ネットワークができるといいと思います。そして、利用促進のアイデアをどんどん出していくことが大事です」(石丸さん)「路面電車のあるまちは活気のあるまちが多いので、LRTとまちづくりはセットで考えてほしいと思っています。特に、バリアフリ-の視点が大事だと思います」(村井さん)
会場に集まった参加者は約1時間のトークショーを熱心に聞き入りました。