石北沿線のみなさまとともに山を越えたい

最後の183(イッ・パー・サン)

2023年3月18日のダイヤ改正で定期運用が終了するキハ183系(500番台~)特急型気動車。かつてはハイデッカーグリーン車をつなげて、北は稚内、南(西)は函館、東は釧路へと札幌から道内各地を駆け巡っておりました。
183系(500番台~)の先頭車は、初代(0番台)のスラントノーズ型(非貫通)と形状が大きく異なり、貫通型で運転席の反対側にある列の客席は、前方がよく見えるので展望席のような席になっていました。この4席(先頭・最後尾の各2席)は、引退に伴い「かぶりつきシート」として指定席車はもちろん、自由席車であってもこの2席だけ指定席として取り扱われています。
先日、特急大雪1号(旭川発→網走行)に乗車する機会があったのですが、「かぶりつきシート」のことをすっかり忘れていて、すぐ後ろの自由席からその眺めを少しの間楽しみました。そう、旭川発の自由席車(4号車)は最後尾なので、方向転換する遠軽から先頭車になるのですが、留辺蘂までの乗車だったので正面展望を楽しんだのは35分程でした。なお、3月18日からは、昨春まで主に札幌~釧路間の特急おおぞらとして運行していた283系が特急オホーツク・大雪に充当される予定です。

ある日の特急大雪2号。旭川駅にて

厳しい石北本線

さて、前置きが鉄分多めになってしまいましたが、石北本線は道北最大の都市である旭川市とオホーツク圏の主要都市、北見市や網走市などを結ぶ237.7kmの重要な路線です。しかし、JR北海道が示す維持困難区間のひとつとなっており、近年は、遠軽町内にある駅を中心に利用者の少ない駅を廃止にするなどの経費削減も行われています。
一方、札幌市とオホーツク地域を結ぶ鉄道以外の公共交通機関には、都市間高速バスのドリーミントオホーツク号・北見特急ニュースター号、新千歳・丘珠と女満別の各空港を結ぶ空路があり、一定の代替性があります。ただ、需要は少ないものの沿線の各市町間を結ぶ輸送機関は鉄道だけとなっており、鉄道による旅客輸送が重要なことに変わらないことに加え、オホーツク産のイモ・タマネギを中心とした農産物を中心とした貨物輸送はトラックでの代替輸送は難しいとされ、石北本線の役割が重要なことに変わりはありません。

エゾシカが現れ急減速。出没するというよりはエゾシカ園の中にいる感じ…。

地域のみなさんの車販で

そのような状況にある石北本線を守っていこうと、沿線の関係機関が協力し車内での特産品販売をはじめとした利用促進に資する活動が展開されています。私が乗車した日は北見市の担当で、「石北沿線ふるさとネットワーク」さんが同乗し、特産品の車内販売が行われておりました。(今冬は2月26日で終了)
旭川駅を出発してから少し経つと、同ネットワークから上川駅からと遠軽駅からの2回車内販売を行う旨のアナウンスがあり、乗客全員に取扱商品が掲載されたリーフレットが配布されました。
早速、リーフレットを開いてみると、ミネラルウォーター以外は、その場で食べられるものとお土産用ともにスイーツとなっています。駅弁を食べた後だったので、食後のデザートとして「レストランe’fの白花豆プリン」一択で売り子さんが来るのを待つことにしました。

配布されたリーフレット。メニューはホームページでも確認できる

残念ながらお目当ての「白花豆プリン」は完売。同じく白花豆を使った甘納豆も…。おそらく先頭1号車から順に4号車に向かって販売されてきたので(しかも、4号車の端っこの席)、仕方ないですよね。売れることはいいことですから。白花豆を使った商品は品薄と聞いていたので、現地での購入に望みを託し、せっかくなので「篠根果樹園のアップルシードルキャンディ」をお土産用に購入しました。こちらのキャンディは「」という、今では珍しいりんごから作られています。
個人的には、特産品でなくても構わないので「もう少し飲みものの種類があればなぁ」と思いましたが、言うは易しで色々と調整が大変なんだろうなぁと推察しておりました。

アップルキャンディー。酸っぱめのりんごなので、キャンディーにするとスッキリ風味。

車内販売の担当

沿線のみなさんによる車内販売は、北見市・網走市と遠軽町・美幌町の2市2町とオホーツク総合振興局の各自治体が担当し、それぞれの自治体と各地の観光協会などと共に行われており、地元のお菓子屋さんも参加されているものの民間の非営利団体は、唯一「石北沿線ふるさとネットワーク」さんだけとなっています。
今冬の車内販売実施日は1~2月の土日祝日を中心に、主に特急大雪1・2号を中心に行われ、網走市の担当する日のみオホーツク1号と大雪4号でも行う予定となっていました。

車内販売の様子

「石北沿線ふるさとネットワーク」さんについて

「石北沿線ふるさとネットワーク」さんの取組には頭が下がる思いで乗っていたのですが、勝手ながら同ネットワークのホームページから、少しご紹介させていただきます。

「石北沿線ふるさとネットワーク」は、2016年8月に前身となる「ふるさと銀河線沿線応援ネットワーク」(以下、応援ネット)から名称を変更して誕生されました。応援ネットは、その名の通り、かつて池田~北見間を結ぶ第三セクター「ふるさと銀河線」の利用促進や同線存続の活動を展開されていましたが、その甲斐もなく同線は2006年4月に廃止、バス転換されました。それからちょうど10年後、今度はJR北海道が石北本線を含む8線区(輸送密度200人以上2,000人未満の線区)を自社単独維持困難路線として公表。今後の持続的な鉄道のあり方について一石を投じ、沿線自治体はもとより道内に衝撃が走りました。
このことを機に、応援ネットは「石北沿線ふるさとネットワーク」に名称を変更。前述の車内販売に加え、観光列車に手を振って乗客を歓迎する運動や石北線沿線応援ツアーの実施など、様々な活動を展開されています。
特筆すべきことは、鉄道の存続を目的とする団体は廃止の阻止をエネルギーに活動するわけですから、廃線とともにその団体も消滅することがほとんどです。ですが、この「石北沿線ふるさとネットワーク」は、解散どころか銀河線廃止後も地域活性化のために観光などの他分野や市町村と連携し、地域のために地道に活動を展開され今に至っていることです。詳しくは「石北沿線ふるさとネットワーク」さんのホームページをご覧ください。
単独維持困難路線問題。今が一度止まると再び進めなくなる急な上り坂の途中で、もうすぐレールジョイントの音も軽やかに聞こえる平野部にたどり着けるといいのですけどね。

かぶりつきシートのひとつ後ろの席から。(遠軽~生田原間)

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