地域公共交通シンポジウムin北海道

3/15(金)札幌市中央区で開催された「地域公共交通シンポジウムin北海道」がYoutubeで公開中です。
サイト内に配布資料や文字起こしもありますが、約3時間あるのでどんな内容だったのかを大雑把に(中途半端に!?)まとめました。

基調講演

地域交通を核としたまちと人との紡ぎかた(呉工業高等専門学校 環境都市工学分野 教授 神田 佑亮 氏)

再構築協議会(全国初)が設置された芸備線の一部区間は、小樽~余市間の利用者数とは比較にならない程少ない。(最低11人/日)公共交通の衰退は、経済の縮小、地価の低下など、人口減少を取り巻く問題の一部で、道路と異なり「(本数を減らす等)サービス水準を下げる」という特有の問題がある一方で、ビジネスの可能性があるようだ。京都市のモビリティ・マネジメント(MM)では、「便数が増えてもバスに乗らん!」と言っていた人が、「バスに乗るようにしている」と言うようになった。ただ、MMの効果がいつ表れるかはわからない。

地方はスピード感がありビジネスがしやすい(win-win)

例1)高速バス(三次→庄原)でパンを1個100円で運んでいる。利益よりも地域の役に立っていることを伝えたいバス会社と、利益は薄いが顧客満足度の向上につなげたいスーパーが組んで実施している。

例2)広島⇔三次間で、高速バス・JRが片道ずつ乗れる「バス&レールどっちも割きっぷ」がある。これは両社のトップ会談で決まった。

地域交通は、地方でも可能性のある時代が来た。どん底から這い上がるつもりで、ビビらず時流にのっかっていこう!

地域公共交通優良団体国土交通大臣表彰 記念講演

むらバス運行が地域にもたらしたもの(赤井川村 総務課長 髙松 重和 氏)
中央バス・赤井川線の廃止を契機に、スクールバスを使って自家用有償運送を開始。
※むらバス運行までの軌跡は運輸局HPにあるPDFを参照
バスの購入にクラウド・ファンディングを利用し、「共感=関係人口」を増やした。村内のハイヤーやキロロリゾートと連携し村にある資源を総動員したほか、地域おこし協力隊によるアシストサービスがラストワンマイルを担っている。村内の事業者なので、お金が地域に落ち地域内循環するといった効果もある。
バスの必要性は「暮らしやすさが向上する」こと。そのために、利用者や乗務員の声を大切にしている。コープさっぽろ余市店への延伸で、買い物が楽になったという声も。赤井川線がカバーしていたエリアの余市町民にも今まで通り乗ってもらうとともに、余市駅内にある余市観光協会ではむらバスの定期券を発行してもらっている。村内のタバコ屋では始発~最終便まで営業してもらい、バス待ち環境の一躍を担っている。(公共をみんなで支える=共創)
むらバスにはキロロへの観光利用が300%増という効果があり、中学生も親に頼らずキロロへスキーに行けるし、通学送迎が減ることで脱炭素効果も期待できる。利用していないから本数を減らすと明確に言えるためにはデータが大事。「高校への通学のために、朝だけなんとかならないか」という保護者の声を反映して片道定期券を設定。村外者へのアプローチや運休情報を伝える手段として、グーグルマップの経路検索にむらバスを登載した。

パネルディスカッション:多様な関係者の巻き込み方

〈事例紹介〉
事例紹介①:継続可能な習い事応援タクシーを目指して ((株)士別ハイヤー 管理部 馬淵 麻衣子 氏)
士別市地域交通活性化協議会、士別市スポーツ協会、士別ハイヤーとの連携で実施している「習い事応援タクシー」。市内各地から習い事に通うために小中学生が利用でき(市街地300円・その他1,000円)、きょうだい割やスポーツ割100円引(スポーツ協会負担)も設定し、「親の立場としても、住む場所によって習い事ができないということをなくしたいと思っている」。また、保護者から「ずっと続くのか?」と問われ「約束はできない」としか回答できず心苦しかったが、何としても安定的に継続すべくさらなる利用人数の増加を目指す。

事例紹介②:人口5,000人のまちが進める、持続可能なまちづくり (上士幌町 デジタル推進課 課長 梶 達 氏)
高齢者が全てタブレットで直観的に操作できるよう徹底的に工夫したという予約制福祉バス(デマンド)。バスが動かない時間帯も乗務員を拘束していることから、予約がない時間帯はバスの乗務員が配送サービスも担う。また、レベル4(完全自動運転)の場合、コミュニケーション不足の不安があることから「AI車掌を乗務」させた。一方、日本郵便と客貨混載の実験では、日本郵便側にはデメリットしかなかったので、メリットを得られるように再検討したい。全国初のドローンレベル3.5による物流についても紹介した。

事例紹介③:自走可能なモビリティ・マネジメントの共創モデルづくり事業 ((一社)北海道開発技術センター 地域政策研究所 研究員 竹口 祐二 氏)
MMには心(意識されるマインド)・技(高い利便性)・体(人・金・モノ)が重要だが、課題は人材不足(予算や人員がつかない)、実施負担(てまひまがかかる)、支援が希薄(お金になりにくい故)の3つ。「MMを取組む仲間を増やす必要がある」とした上で、MMコーディネーターの育成やMMサポートオフィスの検討などの課題解決策の基盤を示し、生活支援コーディネーターなどを巻き込んでMMを実施している佐賀県の事例を紹介した。

【パネルディスカッション】
神田:巻き込み方は一番悩んでしまうところだが、どうやって踏み出せばよいのか?
高松:顔の見える関係でやっていくことだと思う。一緒に仕事をした人やよく利用するお店の人など。役場は少し翻訳する機能となって、事業者同士をつなぐのが役割。事業は人なり。
梶:都市部の企業には、課題先進地として課題を明確に示す方が心に響く。配送ロボットで10km先に弁当1個を配達するのは無理だからドローンを飛ばしているが、秀逸な都会のシステムが田舎に適応しないこともあるので、合うソリューションを探す。
神田:市役所から「習い事は義務教育ではないからできません」とは言われなかったか?
馬淵:市役所にはダメ元で企画を持って行ったが、当時の担当者が子育て世代のお父さんだったことが大きかった。スポーツ協会は、今後、子どもの活動と移動はセットになるという考えがあった。
神田:担当者や首長が変わることで政策が途絶えたり、民間がしっかりしていると行政がかかわらないことがあるが、自走には何が重要か?
竹口:やはり担当者が変わるとガラッと変わるが、弊社にはフィールドも事業もない。議員などにも「交通って大事だよね」と理解してもらうことや現場の方々も重要なので、仲間を増やしていくことが重要。
神田:外部の人を入れていく建付けはどうなっているのか?
高松:自治体職員だけでは無理だが、役割分担を明確にすることが重要。常に当事者意識を持ち、コンサル任せや運輸局が言ったからこうした…ではよくない。
梶:民間企業から2人派遣してもらっている。課題解決モデルができれば全道に波及できるので、企業は人を出してでもそのモデルをつくりたい。
竹口:交通業界に人が入って来ない。
梶:貨客混載で、貨物事業者が人を乗せる、旅客事業者が重い荷物を運ぶのは大変。モビリティ人材=まちづくり人材。

【質疑応答】
①習い事応援タクシーにより業務量が増えて、一般利用者がハイヤーを使いづらくなっていないのか?
 →利用者が子どもなのでトラブルもあり乗務員はつきっきりになっているが、一般市民用の乗務員が減るわけではない。事務作業についてはシステムが構築できれば楽になる。また、乗務員も習い事応援タクシーの担当を楽しみにしており、子どもと良いコミュニケーションをとっている。
②むらバスを帰りも使いたいという潜在的な要望があるのではないか?
 →余市駅前発の最終便は、赤井川線18:20/むらバス18:30。元々終発を「遅くしない」ということで折り合いをつけてもらい、その代わり朝の便を早くした。早すぎて不便になった人もいるが、たくさん乗る方(朝早い時間)を選択した。

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