【参加報告】「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2019」③ 2日目その2

「くらしの足 白熱討論」

登壇者:加藤 博和氏(名古屋大学教授)
山塚 伸吾氏(第一交通産業株式会社交通事業部営業推進課長)
蔵持 京治氏(国土交通省総合政策局交通政策課長)
コーディネーター:清水 弘子(かながわ福祉移動サービスネットワーク理事長)

白熱討論の登壇者のみなさん

清水:福祉有償運送については、最近「互助・共助の輸送」についての相談が多くなっていますが、介護保険の第6期以降、移動の課題がないというところはありません。2017年4月に社会福祉法が改正され、社会福祉法人に広域活動の責務が追加され、このところデイサービス車両の日中の空き時間を活用した買物支援が増えてきています。こういった地域の助け合い活動は制度があってもなかなか広まらないのですが、加藤先生だからできることなのでしょうか?

加藤:自分たちのやりたいことができる方法はたくさんあります。制度の名前しか知らないとか、運用したことがない人が説明していることもあって、国・都道府県、運輸支局レベルでもうまくいっていないこともあります。
自分たちがやりたいことを明確化して何を使ってやるかが大事なことであって、「加藤だからできる」ではなく、「加藤“でも”できる」と思っていただきたいです。私はどうしてもその地域でやりたいことは、制度を変えてでもやろうという思いが強いだけです。どうして、「加藤に続け!」というふうにならないのでしょうか。

清水:地域のタクシーは、まちづくりにかかわっていますか?

山塚:私はタクシー乗務歴5年で、経営破綻した沖縄のバス会社2社の立て直しも行い、乗合タクシーも34の都道府県で行っています。まちづくりへの関与は地区によってマチマチですが、いただいた話は断りません。呼ばれれば会議に参加し考え抜き、どのような運行形態が良いかを考えます。
タクシー乗務員も不足しており、タクシーがバスの減便の受け皿に成り得ていないですが、全タク連の会長も務めている弊社社長の思いで、「地域のためにできることをやっていく」という思いがあり、自治会長さんらと共に考えています。

加藤:第一交通さんがされている「おでかけ交通」は、北九州のことは聞こえてこなくて、枝光(北九州市)ばかり聞こえてきますが、なぜでしょうか?
御社の社長は社長の立場と全タク連の立場とで全く異なります。「何でもやります」というタクシー会社は希少で、やりたくない場合、やれない場合、判断できない場合が考えられますが、そのあたりを分析せずに言われても説得力がありません。

山塚:弊社は北九州市のおでかけ交通を3地区担当し、八幡地区は15年前から行っていますが、3地区とも定時定路線なので、なかなか変更しづらいです。先日、担当として戻ったので15年ぶりに会議に出席しましたが、自治会長のうち5人が変わっていませんでした。再び、定例の打ち合わせを開始することにしました。

加藤:タクシー事業者が地域に入っていくという取組みをぜひ全タク連で横展開してほしいと思います。

山塚:交通事業者がコーディネーターをやるのがスムーズだと思いますが、リーダー不足なのが現状です。

清水:高齢者の行くところは病院だけじゃなく、自分の楽しみのための移動もあります。制度の面からどんなことが考えられるでしょうか。

蔵持:各事業法を少しずつ緩めていって、それらを活性化再生法の枠組みの中でできるようにしたいと思っています。有識者のみなさまから現場の声を聞いて、制度に反映させたいと思っています。バス路線ついては、複数社で調整すると独禁法上のカルテルに触れることがありますが、合意が得られれば除外でき、供給を調整することができるようになります。
また、協議会でタクシーを含めて公共交通ネットワークを考えていけるようにしたいと考えています。

加藤:タクシーは法的に公共交通ですが、どれだけ議論されたことがあるのか疑問です。私が何回発言しても変わりません。一方、バスやタクシーは商売でやっていることをどうやって公共交通にしようかという話ですが、本当の公共交通といえる自家用有償運送を「公共交通ではない」というのは、好きなようにやりたいから、あるいは好きなようにやらせたいからではないでしょうか。

清水:月1回閉じこもっている人を連れ出すことにとても分厚い資料が必要ですが、本当に必要なのでしょうか?

加藤:10数年以上前から改善するように言っていますが変わっていません。“殻”を破れていないということです。

蔵持:強くご指摘いただいているので、他局と調整したいと思っていますが、我々も色々な書類をいただきながら活かしていない部分があるので、改善したいと思っています。

旅客課長:たくさんの資料をいただきながら、活かしきれていない部分は反省しております。

加藤:必要なのか必要じゃないのかということが議論されていないことが問題です。一番重要なのは安全・安心が担保されているかどうかがわかるかどうかです。そして、書類を電子化すれば業務が簡素化すれば、後の人の仕事が楽になるはずです。

蔵持:当初はすべて必要な内容ということで始まりました。ただ、地理情報(緯度・経度)などではバス停情報にも手をつけておらず活用できていませんので、これらを変えていきたいと考えています。

加藤:公共交通空白地運送ですが、私も昼と夜で移動手段の異なる「空白時間輸送」にしたいと思っていますが、みんな尻込みしてしまいます。

清水:2016年に「高齢者の移動手段の確保に関する検討会」(座長:鎌田先生)が始まりました。期待していましたが、制度があまり緩和されませんでした。鎌田先生は落としどころをどのように考えていらっしゃったのでしょうか?

鎌田:この検討会は高齢ドライバーによる事故が多発して国交省主体で始まったもので、免許返納や今後移動に困ってくる人の受け皿をどう作るかというものでした。

私の思いとしては、人材不足の中、地域のリソースを活用し、今まで以上に緑ナンバーに頑張ってもらい、自家用有償にも頑張ってもらう。さらに、社会福祉法人にも頑張ってもらおうというとりまとめでした。財源不足においては、自動車税をもっと交通に回してもらえれば良いと思っていますが、まだハードルが高いのが現状です。

清水:私が行っている週1回の送迎は交通サービスとは思っていません。交通サービスを作るというよりは、引きこもり、閉じこもり解消のために行っていて、お出かけしないと介護保険を早く使う人になってしまうので、あくまで福祉という視点で行っています。

岡村:先日、清水さんの現場を見学させていただきました。行先にお食事会があるなど、地域づくりをされていて、そのために車があるので、乗り物を見に行ったという感覚ではありませんでした。「くらしの足」といっていますが、足の先を作ること、すなわちコミュニティを創ることが重要だと思いました。

清水:地域の助け合いは交通じゃないといったことがありますが、厚労省と連携など、制度はこういったことを見据えて考えられているのでしょうか?

蔵持:今回パンフレットを作成しましたが、運送に登録が不要なものや介護保険を利用するものも載せました。厚労省との連携、交通計画については総務省(市町村担当)とも連携が不可欠と思っています。

加藤:清水さんの「交通じゃない」という発言はどうかと思いました。我々が作った路線が通院や施設に行くために使われることもありますが、「福祉ではない」とは言いません。それは見方の問題であって、福祉であり交通でもあります。すなわち「のりしろ」なんです。

清水:交通だけでくくって欲しくないだけです。
運営協議会の構成員は、市町村は福祉の部署ですが、国は国交省です。福祉の担当者は、道路運送法をわかっていません。私たちにとっては同じテーブルについていますが、複数の省庁がやっていて、私たちはどこにいるのだろうと思っています。

加藤:私からすると福祉こそタテ割で、交通はタテ割りじゃなくて‟はぐれもの“。そもそも交通をやっている人がいません。たくさんいる福祉の人こそ、交通のことを勉強して入ってきて欲しいです。

清水:横浜市に中村文彦先生が座長を務める審議会にある4部会のひとつに地域交通部会があります。
福祉の複数部署、道路局、子ども未来局などが入っていますが、交通計画の見直しの時に、今回は福祉の視点を盛り込んだものにすべく2018年10月に改訂されました。これから実態を創っていくといった感じです。

加藤:「交通と福祉」は没交渉なのではないでしょうか。なぜ、福祉の分野では交通は完全無視なのでしょうか。それは国交省や交通事業者が面倒くさいからかと思いますが、我々だって面倒くさいです。福祉の人は完全に車社会で、交通に手を出したくないといったことが殻を作ることで、それを打ち壊すことが大事なことですから、没交渉ではなく連携を深めるべきなのだと思います。

清水:地域の人が行きたいところに行ける社会の枠組みのひとつはMaaSかと思います。

伊藤:MaaSは連携がキーワードですが、我々の連携経験値は非常に低いのではないでしょうか。
個人の思いがすごく強い割に一緒にやろうということは得意ではないと思いますし、社会の中で一緒に行動できることは少なく、使命感だけでの連携は難しいことなのでしょうが、幸せになるような連携が進めば良いと思っています。

清水:私たちは神奈川県のタクシー協会とは仲良しで、障害のある人を1人でタクシーに乗れることを当たり前にすることを拡げようとしています。

山塚:タクシー業界としてやれることはたくさんあると思っていますが、うまく伝えきれていない部分がたくさんあります。乗合タタシーも4,000地区でやっていますし、ドライバーの採用努力を知っていただけたので良かったと思っています。

蔵持:車は100年に1度の変革期でMaaSについてもご意見をいただき、地域公共交通活性化法や独禁法の見直しなど、今まさに変えようとしている状況ですが、現場が動きやすくなる制度を作っていくことが我々の使命だと思っています。

加藤:私は焦っています。私の専門は環境で異常気象の要因がCO2ならば、このままではまずいです。その対応をしなければなりませんが、高齢化など色々な問題が出てくる中で、日本は昔の地位を保っていません。私が関わっている地方はどんどん衰退してしまうという焦りが、私を突き動かしています。
交通だから…、福祉だから…にはしたくないので、「くらしの足」や「おでかけ」という言い方をしています。その思いに賛同する人が一堂に集まれる場がこのフォーラムで、思いは熱く、判断は冷静に行ってきたいと思います。全員が連携すれば良い日本につながっていくと信じています。
また、制度をきちんと理解する上で、国語力は持った方が良いですし、制度がおかしければ変え、いいことはやっていけば良いと思っています。

清水:高齢になって外出できなくなるかもしれませんが、何かしらの支える力で外出できれば良いと思います。このフォーラムで話し合い、研究者に伝え、制度につなげていければと思います。

※2020年は長岡市「アオーレ」で開催予定。

白熱してもいい感じ

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