オープニング画面JR北海道が昨年10月に「(自社)単独では維持困難な線区」を公表し、道内はもとより全国各地から北の鉄路の行く末を心配する声があがっています。これを機に、全国各地で活躍中の公共交通に見識の深い6人の学識経験者が駆けつけ、シンポジウム「地域の公共交通をどのように守っていくべきか~JR北海道の路線存廃問題を考える~」(主催:北海道大学交通インテリジェンス研究室、地域のおでかけ交通のあり方研究会)が、2017年3月8日(水)、「北海道大学 鈴木章ホール」にて開催されました。本シンポジウムは、登壇者それぞれからの話題提供と全員によるパネルディスカッションで行われ、参加者約200名が論議を熱心に聞き入りました。(先生方は全員手弁当(ノーギャラ)だそうです。)

鉄路を是が非でも残せというのではなく、なぜそこに鉄道が必要かを全ての関係者が考え、仮に鉄路を残すとしたのならそれなりの覚悟を持ち、今以上に鉄路を支え・利用する意識を持つとともに相応の負担をすることは必須である。そして、まちづくりと一体となって鉄路を活かせる公共交通網を再構築していかねばならないというのが、議論の大枠です。

■話題提供のポイント(報告者が印象に残った点を記載します。講演資料は後日公開されるとのことです。)
1「北海道の鉄道ネットワークをどのように考えていくべきか」(北海道大学 岸邦宏 准教授)
主に「北海道鉄道ネットワーキングチームのとりまとめ」の議論の経過などを踏まえ、地域住民がいかにして鉄道を利用するかを考えなくてはいけない。現状と同じ利用状況ではだめで、さらに地域負担が0円ということも考えられない。

2「鉄路存廃論議の課題-東北地方の経験から考える-」(福島大学 吉田樹 准教授)
JR只見線の復旧(上下分離)や十和田観光電鉄(2012年廃止)、JR大船渡線BRT(バス高速輸送システム)の事例を踏まえ、「鉄道の存廃」だけにとらわれず、駅の先へ行けることなど、公共交通がきちんとネットワークとしての機能を果たせることが重要である。

3「四国地域における鉄道をとりまく状況~希薄な公共交通に対する意識~」(香川高等専門学校 宮崎耕輔 準教授)
四国も北海道同様に著しい人口減少や高速道路の延伸など、公共交通にとって厳しい環境にある。しかし、鉄道を残すには鉄道事業者の思いや行政の支援が重要であるものの、どのようなまちにしたいかなどの将来ビジョンを考え、地域全体の取組みが最も重要である。

4「JR九州から見たJR北海道問題-何が出来て、何が出来ていないのか-」(大分大学 大井尚司 准教授)
JR北海道はJR九州と比較されることがある。JR九州は「ななつ星」をはじめとする観光列車や駅ビルや農業参入などの事業多角化でも注目を浴びるが、九州は7県・政令指定都市が3つあるなど北海道とは条件が異なっており、安易にJR九州を真似ることはやめた方が良い。

5「鉄道存廃を考えるための論点-JR北海道問題 何が問題か-」(流通経済大学 板谷和也 教授)
交通予算の使い方に関して、フランスで道路予算の5倍を鉄道に投じた事例を紹介。路線によっては鉄道の廃止は地元へ影響を及ぼさず、バスでも街の賑わいを生み出している国内の事例を踏まえつつ、鉄道の利用状況により路線を残す・残さないを検討することが大事である。

6「「残す」から「活かす」へ!~地域が鉄道を支え、鉄道が地域を支える~」(名古屋大学 加藤博和 准教授)
激変してきた地域公共交通政策を踏まえ、明知鉄道長野電鉄屋代線代替バスなどの取組を紹介。鉄道廃止論議は公共交通網をリニューアルする好機であるとする一方で、地域公共交通を維持するためには、交通事業者、地域住民、市町村等が、対等にみんなで「一所懸命」支えることが極めて重要である。

パネルディスカッション

パネルディスカッションの様子

 

■パネルディスカッション
【テーマ】
1.鉄道を存続すべきかどうかをどのように判断すべきか(①鉄道の必要性/②鉄道の存続方法)
2.残すと決めた鉄道をどう維持していくのか
3.道外から北海道をどう思っているか

 

 

 

1.鉄道を存続すべきかどうかをどのように判断すべきか(①鉄道の必要性)
吉田:鉄道の維持により、雇用が増えたり、高校生が下宿せず通えるようになるなどの効果を明確に示せることが必要。

宮崎:琴電(本社:高松市)が廃止されていたなら、渋滞が深刻化し、都市内移動も時間がかかるようになったはず。よって、鉄道があることにより、安心・安全に移動できるかがポイント。

大井:以前の研究で、鉄道の運営主体は全て民間任せより、「公」(自治体など)がある程度支援している方がむしろ運営が効率的で、維持されやすいことがわかっている。

板谷:北海道の鉄道は都市間移動の役割が多いが、人は都市間を移動する際、拠点となる駅を目指す。駅はまちのハブとして地域の人が集まれる場所でなければ残しても意味はない。場所に魅力があれば、鉄道とバスのどちらを利用してもいいはず。

加藤:生活圏間の移動は高速性が問われるが、JR北海道は諸般の事情により高速化できなくなった。
東海道新幹線は本数と速達性で鉄道の優位性を発揮しているので、いつも満席。
航空機、都市間バス、鉄道、クルマをすみわけした「交通ネットワーク」を作ることが重要。

-都道府県の役割について
加藤:バスでは、市町村間を結ぶ路線は国と都道府県が補助しているので、広域的には都道府県の役割が大きい。三重県、愛知県では、国が補助をする要件を満たさないコミュニティバスも必要である路線は県が補助している。

吉田:青森県は、県全体としての地域公共交通網形成計画を持っており、県と自治体のすみわけができている。
基礎自治体には公共交通の担当はいないか、いたとしても1人。都道府県の職員を基礎自治体に派遣する方法もある。

(②鉄道の存続方法)
-単独維持困難路線の「下」を全て持つには100億円規模。それは持続可能か。
板谷:フランスで、鉄道の維持に道路の5倍かかるというときに、高速化のための車両更新(トラムトレイン)等、理由が明確であるなら住民の理解が得られている。
全路線の維持は巨額なので、必要なところを維持できるように残す路線を絞る必要がある。

加藤:「上下分離」と「公有民営」は異なる。会計上、利益を生まない「下」を持つと金融機関から融資も受けられない。上下分離せず、だらだら補助をし続けるとダメになる。自治体が鉄道を守る“覚悟”があるなら、上下分離すればよい。

-JR北海道の自助努力として、下の部分のコスト削減を研究しているらしいが、途中とのことで公表されていない。

2.残すと決めた鉄道をどう維持していくのか
吉田:鉄道を残す場合、都市間輸送と地域間輸送に分けて考える必要がある。
都市間輸送は、他の交通機関との競争力を高める。福島大学の受験生は、東北六県より北関東の方が多い。東北新幹線は毎時2本程度あり速いからである。北海道も高速化に投資する。
地域間輸送は、駅を“場所”としてどう使うか。地域住民や観光客が駅に降りるか、生活交通としてちゃんと高校・病院に行けるようになっているか。

宮崎:網形成計画の目標をどう設定するかで悩んだ末、10年後もどう維持するかという目標を設定したことがある。各交通モードの特性をどう活かすか。また、鉄道がダメなら他の交通モードをどう地域に溶け込ませるか。

大井:駅などの拠点にどう付加価値を付けるかは重要で、そのためには地域でアイデアを出す必要がある。例えば、稚内駅は2階に映画館があって、目的が鉄道利用でなくても人が来るようになっている。JR九州は鉄道で来てもらう価値をつけており、地域とも向き合っている。

板谷:交通だけをみていてはダメ。交通はあくまで“派生需要”なので、所要時間も運賃・料金も少ない方が良い。
結節点を魅力ある場所にすべきで、フランスでは車だけで来られた場所を公共交通機関や自転車でしか来られないようにした街もあり、郊外にきれいな病院を作って車で行ってもらうようにしてはダメ。

加藤:公共交通は「乗って楽しい」×「降りて楽しい」のかけ算。
病院は本来行きたい場所ではないはずだが、公共交通の利用者が多いのは事実。駅は市場のように人が集まれる場所とする必要があり、駅が楽しくて人がたまれる場所となっているか。公共交通を作り直し、魅力の再構成を図る必要がある。

吉田:バスは鉄道より信頼性が低く、路線図などの運行情報も少ない一方で、バスは鉄道より本数が多く経路変更も可能なので、両者の良い点を織り交ぜて考えるべき。
十和田観光電鉄の廃止代替バス利用者の6割は、定期券を持つ高校生。バスを高校の玄関横づけにするなど利用者の維持への工夫をしている。(市民と観光需要は減少している)

3.道外から北海道をどう思っているか
岸:JR北海道という会社そのものが危うい。JR東日本との合併に賛成という声もあるが、上場企業であるが故、単独維持困難路線については株主から即廃止を求められる可能性もあって危険と考えている。
道外から北海道をどう思っているか、国や道などを含めて関係者へのご意見をお願いしたい。

吉田:JR北海道は本社が道内にあり、地域内で議論できるのでうらやましいと思っている。
只見線はJR東日本(本社:東京)で、東北にどれだけ労力を割けるのか疑問だが、北海道は道民だけで議論できるし、自らを特殊な環境下にあると考えてはいけない。

宮崎:北海道ひとつは強み。四国は4県あるので、それぞれ違うところを見ていてまとまらない。都道府県間の調整は難しいが、北海道はひとつ。

大井:北海道庁はJR北海道の鉄道ネットワークをどう思っているのか疑問に思う。JR九州は上場し国の手を離れたが、JR北海道は「公」の部分が大きい。
九州7県は「九州はひとつ」と言っているが、実際は「九州はひとつ・ひとつ」(違う)。例えば、宮崎県がJR九州の株を買おうとしているが、それはJR九州にモノ申せるようにしたいから。
JALの再建をヒントに、北海道でもJRの再生ができないだろうか。チャンスかもしれない。
JALは地方路線を多く持たされた国策会社。破たん時、ボロクソに言われたが、非常によくなった。JR北海道は、九州を反面教師に独自の会社として残してもらいたい。

板谷:国鉄民営化時、リゾート列車などを持つJR北海道は、私にとって憧れの存在だった。そして、急行の特急化などのサービスアップ、駅ビル等の経営多角化もしてきた。DMV(デュアル・モード・ビークル)は、コストの面から鉄道車両の更新ができず、安いバス車両で代替しようという発想からきている。鉄道の廃止を切り出せずコストダウンを図るためだったが、10年間、現状維持に腐心した結果が今。無理やり運行させることに未来はなく、足をひっぱるだけである。かつての明るいJR北海道に! 一致団結して前へ。

加藤:JR北海道を大事にしてください。貴重な会社だがこのままでは破たんする。
原因は、やれないことをやらせてしまったから。JR北海道を国の会社から北海道の会社にしましょう! 北海道は楽しく移動できる、トキメキがある大地にしてほしい。
ターニングポイントは、無理に残す、切り捨てるだが、どちらも禍根を残す。「廃線処理」になる前に私を呼んでください。

岸:地域がやらないといけないことに対し、いろんな視点を持って地域の人々に取り組んでもらえればこのシンポジウムは成功。

                                                 (文責・松本公洋)

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