「くらしの足をみんなで考える 全国フォーラム2018」①1日目の続きです。

●ショートスピーチ
「地域公共交通の活性化及び再生に向けた取組」

公共交通空白地の変化

ショートスピーチの一コマ

城福健陽氏(国土交通省総合政策局公共交通政策部長)
現状として、公共交通空白地は近年コミュニティバスなどの運行により少傾向となっているほか、過去30年間で高齢者の外出率が増加傾向にあるなど、地域や時代により変化が激しいので、日々試行錯誤しています。地域公共交通網形成計画においては、豊岡市(兵庫県)や奈良県などにおいては、特に地域特性に応じた内容が見受けられます。
また、高齢者の移動に関しては、自治体や文科省・厚労省などの省庁連携など、様々分野を越えて取り組んでいるところですが、新しいモビリティサービスについては、2025年を目途とした高度な自動運転の実現シナリオを掲げるとともに、乗継ストレスの解消ができるMaaS(Mobility as a Service)などを含め、地域の最適な公共交通を創り出すために予算要求を行っています。

●「くらしの足 基調討論」-ITは「くらしの足」を救う!?-
【ディスカッション】

◇パネリスト:水野羊平氏(永井運輸(株)バス事業部)、山崎友寛氏(静岡県交通基盤部都市局地域交通課)
◇コーディネーター:加藤博和氏(名古屋大学大学院環境学研究科 教授)、伊藤昌毅氏(東京大学生産技術研究所 助教)

永井氏

「GTFSデータを構築したバス会社の実践例」水野羊平氏(永井運輸(株))と「ITとくらしの足についての考察 バス会社の実践例」山崎友寛氏(静岡県地域交通課)の事例紹介を踏まえ、ディスカッションが行われました。
水野氏からは、群馬県の公共交通情報のオープン化を機にダイヤ編成システム「その筋屋」を活用して、自社のバス情報をgoogle mapに掲載したことなどにより「イベント時の円滑な輸送が可能」になったことが紹介されました。

 

 

 

山崎氏

一方、山崎氏からは、伊豆地域の公共交通網形成計画による実証実験とバス運行情報のオープンデータ化を踏まえ「ITの活用は事業者の負担が増え、すぐに利用者増に結び付くものではないが、観光客など地元以外の人への情報提供として必要である」ということが述べられました。

 

 

 

 

 

伊藤:多くの事業者でオープンデータ化が進み、事業者のホームページから事業者などのデータをダウンロードできるようになりました。それを活かしてアプリを作ることも可能です。GTFS形式は公共交通機関の時刻表と地理的情報に関するオープンフォーマットですが、国土交通省から提供されているデータもGTFSに基づいています。
ITで情報提供ができるようになると、青森市営バスのように墓参バスなどの臨時便の情報など、できるだけ情報を提供したいという思いに火が付きます。
また、ITと交通に関しては、ソフトバンクトヨタUberMobikeなど、世界が模索し注目を集めています。「ITが暮らしの足を救う」ということは当然と言えます。

加藤:今朝、都営バスの方向幕で「とげぬき地蔵前」行を見ました。旧名称の「巣鴨車庫前」よりはるかにわかりやすいですから、単純にネットに情報を載せれば良いとは思いません。
青森市は定点観測している地ですが、わかりにくいままです。ホテルから今日の会場までバス1本で来ることができますが、最寄停留所は「池袋駅東口」なのにホテルから「池袋保健所前」停留所までのルートが表示されました。私は違うことに気づきましたが、これでは不便というより不安です。
モビリティ・マネジメントは利用者を増やせたでしょうか。頑張っても不便なものは不便です。バスマップも複雑な路線を可視化したら複雑なことがわかるだけです。Marsになっても、ダイナミズムに路線を変えることが重要です。

水野:レストランのメニューと同じで、googleに載ったからといってお客さんは増えません。目につけばよいという点から取りあえず載せました。

加藤:鉄道と違いバスはネットに載せる必要がありますが、バスは決まった人しか乗らず、一見さんは乗らないので、地方ではそのための労力をかけられるのでしょうか。

山崎:事業者のIT分野は、水野さんのように個人の力に頼っていますので、興味を持っている社員を会社が見守ってくれるといいですし、Marsは5年位で変わってくると思っています。

伊藤:ITの前にコンテンツ化をやれというのは、逆に「もっとIT化しろ」と聞こえてきます。路線再編は、複数路線や人口動態などを把握する作業があり、アナログではやりきれません。
公共交通がIT化されれば、例えば北海道の誰かが考えたアイデアが数か月後に九州でもできるようになり共通化されてわかりやすくなります。ただ、地域性が失われ寂しく感じるかもしれません。

加藤:ITで事業者が選別化されませんか。

伊藤:事業者の統合が必要でしょう。

加藤:伊藤さんのメカニズムでできますか。
自動的なハンドリングは危険で、いろいろなデータが揃うといい路線が作れるとは限りません。アンケートで潜在している奥深いところを探ることにより、いい路線ができます。ITによる最適化は、やってみないとわかりません。
青森のいいところをひとつあげると、三内丸山遺跡への行き方がネットのPDFと現場の案内と案内所のフォーマットが同じなのは良かったことです。これからは、個人個人に向けた案内をサイネージによってできるようになることでしょうか…。

水野:データをひとつ作っておくと、アプリによってはそれを使って紙でも再現が可能になります。

討論中の様子

山崎:利用情報には膨大なデータがあって、その処理をする人が必要ですが、事業者にも行政にもそのような人はいません。最終的には人かと思いますが、その辺りはどうなんでしょうか。

伊藤:岡山市の各バス会社間はゴタゴタしていますが、各社がオープンデータを出していて、公共交通オープンデータ化の最先端都市になっているので、市民は全部の情報がわかるようになっています。
オープンデータ化にはSQLが必須ですが、現在、高校では情報が必修となっていますが、教科書にSQLが載っています。我々の頃とはITレベルが大きく違っています。

加藤:先ほどのバスマップについて補足しますと、複雑な路線を示すことに意義があり、路線を単純化するにはどうしたら良いかを考えるツールになります。作る作業はとても大変ですが、IT化もまた同じで、もっといい路線ができるためのツールになって、多くの方に乗っていただけるようになると良いと思っています。

水野:データ化によって路線図もかけるようになりますので、可視化することができます。

山崎:事業者が継続することで省力化につながるものだと思っていただき、将来的に標準フォーマットにできれば良いと思っています。

伊藤:路線に注目したオープンデータは、Marsのような華やかさはありません。今ある公共交通をITで進化させる。Uberは黒船ですが、毛細血管のような公共交通は重要です。

加藤:黒船は怖くないですが、とはいえ、公共交通が今のままで良いとはいえません。Marsが来ようが、何が来ようが、公共交通維新を起こしたいと思います。

●「くらしの足 白熱討論」-「愉しみのための交通」をどう創っていくか-
◇パネリスト:鎌田実氏(東京大学大学院新領域素創成科学研究科 教授)、新井啓明氏(小平市役所企画政策部秘書広報課長補佐兼広報担当係長)、篠原俊正氏((株)ハートフルタクシー取締役副社長)
◇コーディネーター:岡村敏之氏(東洋大学国際地域学科 教授)

白熱過ぎて…(実はデジカメの電池が切れて携帯で撮ったらこうなってしまいました)

岡村:昨日(第1日目)は、移動・健康は愉しみのひとつ。共有は楽しく。移動は気持ちを高めていく。今日の午前中は「ITで変えられることと変えられないことがある」といった話が行われました。
ITと公共交通との相性では、例えば、行こうとしている市役所までの経路を検索しようとすると「市役所前」というバス停は日本中にありますし、“前”のあるなしで検索できたりできなかったりと“落とし穴”が多いです。
パネリストのみなさんからトピックをご紹介していただきます。

〔トピック①〕
鎌田実氏(東京大学)「車に頼ってきた高齢者が楽しく外出するには?」
高齢運転者による死亡事故分析と改正道路交通法の施行状況などを踏まえ「公共交通が免許返納高齢者の受け皿となるのは難しく、まちづくりを変える必要があるのではないか」と話し、町全体を「シェア金沢」(石川県)のようにする構想が始まった“輪島カブーレ”について紹介されました。

〔トピック②〕
新井啓明氏(小平市役所)「『足』(とIT)は『くらし』を救うか?」
小平市のコミュニティバス「にじバス」とコミュニティタクシーの導入や地域との協働について説明され、コミュニティタクシーの導入にあたっては「機運を盛り上げるところからスタートし、市役所はルート案などを一切提示せず」、ダイヤ改正やバス停掲示物の貼り替え等も住民中心で行われた様子などを紹介されました。

〔トピック③〕
篠原俊正氏((株)ハートフルタクシー)「楽しくお出かけしたくなる街(社会)となるには?」
「タクシー業界の良くないイメージを払拭し、楽しんでお出かけしていただきたい」との思いなどから、ママさんドライバーの採用によるキッズタクシーやイメージアップへの貢献などについて紹介され、働きやすい環境の整備に取り組んでいる様子をうかがい知ることができました。

【白熱討論】
新井:小平市は名前とおり真っ平で、車が少ない代わりに自転車が多くなっています。都営住宅が多く、以前は駐車場がほとんど埋まっていたのですが、最近は半分程度が空いています。コミバスの乗客は女性が多いのですが、男性はどうしているかわかりません。

篠原:海老名市では、フィットネス等の予防介護サロンを開設しましたが、バス路線が駅を起点にしており、自宅とサロン間は駅での乗換が必要だったため参加者が集まりにくかったのですが、タクシーで結ぶことで利用者を増やしてきました。
現在、既に相乗りで温浴施設に行く企画などを行っていますが、お買物ツアーを企画中です。

鎌田:大都会はマイカーの代替手段に恵まれていますが、地方の免許返納率は低く、地域や時間帯限定の免許の必要性も検討されています。

岡村:免許返納はゴールではありませんので、自分の運転が危険だということを自覚し、新しいライフスタイルの提案をしていくことが必要かもしれません。高齢者の移動のウォンツを知るためには、地名などでの行きたい場所ではなく、したいことを知ることが重要です。

新井:投書で「以前はカラオケや買い物にはタクシーを使っていたため全く歩かなかったが、家から100mくらいのところに停留所ができたので歩くようになりました」と感謝されたことがあります。

鎌田:東日本大震災の被災地でバス停から800mくらい離れた仮設住宅に住む女性が、最初、買物は軽いという理由からパンのみでしたが、住宅までの移動手段を用意すると、元々料理が好きだったので肉や魚を買って料理をするようになりました。スーパーに行くと仮設住宅暮らしで離れ離れになった親しい人と再開し、毎回化粧をするようになり、1か月後には孫のために料理をするようになりました。「足」は大事なのです。

篠原:母は横浜市在住の84歳で、病院の診察日などを忘れるようになってきたので、私が電話で教えるようになりました。米がなくなりそうになったら一緒に買物にも行きますが、親が遠くに住んでいる人にはなかなかできません。AIの力でニーズを予測したり、病院や温泉などへのお出かけを促して相乗りさせる仕組みができると良いと思います。

岡村:「足」だけではどうにもならないけど、「足」+αがあれば何とかなるようなことはありますでしょうか。

鎌田:合併して広域になった北秋田市では、包括ケア事業者が戸別訪問する際、1軒が30km離れているところもあり特に冬は大変です。中・長期的に考えると、街をコンパクトにし集合して住む必要があるのではないでしょうか。

新井:今ある制度をうまく使って“狭間の問題”や“制度の隙間”を埋めていければ良いと思っていますが、スピード感はありません。

篠原:「足」による利便性の確保は予防介護のひとつです。高齢者はショッピングモールよりも中心市街の商店街の方が良いと言います。総合的に「足」を確保することが重要で、大きな視点で住みたい街にしていくことが必要だと思います。

岡村:買物ツアーの4人はどうやって集めるのでしょうか。

篠原:自治体が買物難民を4人ずつピックアップしてグループを作ってもらいます。

岡村:愉しく出かけられる街、輪島市の例をお願いします。

鎌田:今はまだ計画の一部しか進んでいません。お店には駐車場はなく、徒歩のみの来店となっていますが、電動カードだと何軒も回れますし、カートと徒歩を組み合わせて回ることも考えています。
「Maasは良い」と言われますが、カーシェア等の便利な方に流れ、逆にCO2増大という結果が既に出ています。

新井:コミタクは最寄駅を結ぶ定時定路線になっており車内での会話などが生まれやすく、乗合≒社交につながっていますので、今の施策が維持できれば良いと思っています。

篠原:愉しく過ごせる術は健康でいることです。認知症は交通空白地に多く、お出かけと健康が大事です。1人で通院時に利用していた人の要望に応じて買物に付き添うようになると、通院時は起きたままのような恰好だったのが、だんだん身なりがきれいになって、数年ぶりにパーマをかけるようになったという利用者の情報をドライバーと共有したことがあります。事業者としては、斜めに歩いていたような人がしゃきっとなるようなお手伝いができれば良いと思っています。

岡村:「会う」には、知人・友人と会う、見知らぬ人と会うといった意味がありますが、自分で行動を決められる街は住みやすい社会です。「足」があることで救えるなら救いたいと思います。
「街を愉しく」は来年のテーマになるかもしれませんが、「きれいごと」とは本来あるべき姿で、それをできないからと言って「きれいごと」だと切り捨てるのは如何なものでしょうか。
「『愉しい』は、きれいごとだけど、きれいごとではない。」とまとめたいと思います。

篠原:こういう場に来ないタクシー業者には、タクシーが生き残るには「できるか、できないか」ではなく、「やるか、やらないか」だと言いたいです。

鎌田:シルバーカーに乗っているのを見ると「あの人はダメになった…」と言うような日本人のマインドの転換が必要です。世間の目を気にせず、外出のための機器を活かせるような環境になればと思います。

新井:こういう場に来ない公務員には「よほどのことをしない限りクビにならないので、ガンガン行きましょう」と伝えたいです。