今年も>「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2016」に参加しました!からの続きです。

1 基調講演・対談
2日目の午前中は、“地域を元気にする「種」くらしの足でカタチにする「基調講演・対談」”と題し、吉田樹先生(福島大学経済経営学類)と村瀬茂高氏(WILLER ALLIANCE株式会社代表取締役社長)のご講演が行われました。
吉田先生がお住まいの仙台市において、地下鉄南北線開業時に行われた仙台市バス再編で、サービス水準を1%下げたら利用者が1.4%も減ってしまった…という事例を基に、公共交通が陥っている「負のスパイラル」からどう抜け出せば良いのかという問題。
その答えの一つが、「おでかけのきっかけ」づくり(まちづくりとの連携)。やはり、“おでかけしたい場所”がなければどうにもなりません。(病院は、おでかけしたい先ではなく、おでかけせざるを得ない場所ですし…)
大都市部と異なり、公共交通の利用促進は、地方都市では何をやってもダメと思われがちです。しかし、例としてあげられた八戸市では、八戸駅⇔本八戸駅間を(確か、多少減便)わかりやすい等間隔ダイヤにし、増便なき増便を行った結果、利用者が増えて黒字化できたことや、往復乗車券と観光地の利用券などを組み合わせた「バスパック」による利用創出について述べられました。
また、STS(福祉輸送)などの“小さな交通”については、従来の地域公共交通を利用できない人が少なくないことから、そのようなニッチの対応は重要性が増してくるとして、サイクルシェアなども含めて触れられました。
暮らしの足を創る、あるいは守っていくことについて、「『できないこと』を表明するのではなく、『できること』を考えていこう」と締めくくられました。

続いて、村瀬氏から「交通革新とまちづくり」と題してのご講演。
ウィラーグループのミッションはHPにもドカーンと出てきますが、「世界中の人の移動にバリューイノベーションを起こす」です。同社は、「高速バス事業」、「鉄道事業」を主軸に展開されていますが、地域創生につなげていこうとそれぞれの事業において、多数の取組が行われています。

水戸岡デザインの丹鉄列車「あおまつ号(左)とくろまつ号」福知山駅にて。

水戸岡デザインの丹鉄列車「あおまつ号(左)とくろまつ号」福知山駅にて。

高速バス事業は有名なので既にご存知の方も多いと思いますが、鉄道事業は京都北部にある天橋立などの有名観光地を走る「京丹後鉄道」(愛称:丹鉄)を3セクの北近畿タンゴ鉄道から2015年に事業継承されています。バス事業も鉄道事業は安全運行が必須ですが、鉄道事業を通じて「地域の活性化」を明確に目指されているところが、なかなかできそうでできない部分であると思いました。
数々の取組みの中で、「大丹鉄まつり」の開催により交流人口を増やしたり(約1万人が来場!)、43種類もの企画乗車券の販売を通じて、沿線住民が利用したくなる鉄道を目指されています。車両においても、JR九州の観光列車のデザインなどで有名な水戸岡鋭治氏によりリニューアルされた特急列車「丹後の海」など、鉄道そのものを積極的に活用して、沿線住民の地元愛を高めようとされています。
とはいえ、京都縦貫道の全通など、鉄道事業を取り巻く環境は厳しいことには変わりませんが、今年3月には運行本数を増やし、デイタイムの運行間隔を1時間程度にするなど、観光客誘致に向けた取組や、地域住民やJRとのコラボによる地域活性に向けた取組も行われています。
一方、地域に根付いた収益モデルを生み出せる人材を育成すべく“ビジネススクール”を展開され、12名中3名が事業を始められたそうで、同社は今後も目が離せない交通事業者のひとつであることは間違いないでしょう。

2 ポスターセッション
今回から充実の3時間コースとなった「ポスターセッション」は、62もの団体が出展されました。
これだけあると見て回るのに疲れてしまいますが、一部のセッションをご紹介させていただきます。

NPO法人移動支援Reraさん(宮城県石巻市)。

Reraさんのポスターセッション

Reraさんのポスターセッション。

実は、代表の村島さんは同郷・札幌市のご出身。東日本大震災の被災地で、発災後から継続した活動をされており、以前からご挨拶しようと思っていた方のひとりでした。
伺うと、震災から5年半が過ぎた今も仮設住宅に多くの方が入居され、郊外に点在する仮設住宅と医療機関や商業施設等とを結ぶ移動ニーズは高いとのことでした。ただ、残念ながら、最近、被災地のことが話題にもならず、このまま風化してしまうのではないかと懸念されておりました。
また、ドライバーさんの人数に余裕があるわけではないので、短期間でも来て下さるボランティアさんを随時募集しているとのことです。

 

 

 

 

全国移動支援ネットさん(東京都世田谷区)

移動支援ネットさんのポスターの一部

訪問サービスD型を実施している自治体。

介護保険サービスのうち市町村が担う要支援の中の「訪問サービスD型」についてお聞きしました。
従来の福祉有償サービスや通院等乗降介助では、自宅と病院間など、利用区間が限られてしまい、病院の後で金融機関に行ったりお買い物に行ったりすることができませんでした。
この「訪問サービスD型」では、子どもなど「対象者が限定されない」、「目的・サービス内容が限定されない」、「運送の対価に当たらない(家賃等)部分の補助」が受けられるという特徴があり、通院と買物など、複数の目的による利用が可能になります。
しかし、担い手側の運営面においては、デイサービスなどの介護事業と一体にならなければ、なかなか運営が難しいのではないかとのことでした。
現在実施しているのは3市(千葉県松戸市、神奈川県秦野市、広島県福山市)で、20以上の市町村が実施したい意向を持っているそうですが、その地域に担える団体がいないと実施することができませんし、逆に担える団体がありながらもその地域の自治体に実施する意向がなければできないという難しさもあります。

兵庫県バス協会さん(兵庫県神戸市)

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バス旅ひょうごの配布物

社会実験として9/1~11/30の期間行われている「バス旅ひょうご」。身近な路線バスを利用して旅を楽しみ、兵庫県の魅力を再発見してもらおうという社会実験です。
これがすごいのは、一般路線バスが乗り放題という企画きっぷは全国各地で見受けられますが、路線バス・コミバスに加え、高速バスも乗り放題ということ。但馬・奥播磨、北淡路などの4つのエリア内で、1~2日利用可能となっています。
さらに、“企画乗車券を作って販売中”で終わらず、SNSなどを活用して、バスに乗っておでかけしたくくなる作戦が展開されていること。モデルルートなども充実しており、とりわけ広報が不得手といわれるバス会社をサポートしています。

 

ポスターセッションの様子

数々のポスターセッションで熱気に溢れる会場

弘前、岡山、沖縄など、バスマップサミットに関わる面々もポスターセッションを展開!

 

3 白熱討論

最後の最後は、濃いぃ!?討論、その名も「白熱討論」。
メンバーは、以下のとおりそうそうたる方々。

白熱討論の登壇者

「白熱討論」の登壇者

●野村文吾氏(十勝バス代表取締役社長)
●貞包健一氏(三ヶ森タクシー代表取締役)
●山田和昭氏(若狭鉄道代表取締役社長)
●加藤博和氏(地域公共交通プロデューサー、名古屋大学大学院環境学研究科准教授)

「十勝バスは、各家庭への個別訪問などを通じて利用者増に転換させて危機的状況を乗り越え、他社やタクシー事業者と共に二次交通の充実を図っています。」(野村氏)
「タクシー定期券(往復×20日分)やスタンプカード(40回乗車で千円)といったアナログなサービスを展開し、元気なくらしの足を創り出しています。今後は、便利屋などのサービスを展開してみたいと考えています。」(貞包氏)
「鳥取県のカラーは『ピンク』ということでSLをピンクに塗ってみたり、SLが良く見られる場所で入場料を徴収するなど、話題づくりをどんどんやっています。また、よく3セクは、責任の所在が曖昧と言われますが、逆に官と民の良いとこどりもしながらの事業展開が可能です。」(山田氏)
最後に、加藤先生からは「カラを破って一歩前へ!」というお言葉を頂戴しました。

≪お言葉を頂戴して…≫
「できない理由」を並べるのは非常に簡単です。そして、“文化の違う”他のセクターや異分野の人たちと理解を深めようとすると、最初の一歩はそれなりのエネルギーが必要です。だからといって、机の上で、あるいは、パソコンの前で考えていてもカラは破れませんし、前へも進めないでしょう。
だからこそ、“毎日のくらしにかかわる足”をどうにかしようと(どちらかというと、孤独に闘っている人)している、市民、事業者、行政などの各セクター、福祉、ITなどの異分野に携わる人々が一堂に会すことのできるこのフォーラムは、類まれなイベントであり、貴重な交流の場であり、明日への原動力をいただける機会なのだと思っています。 (おわり)
(文責:松本公洋)

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