10月29日・30日の両日、東洋大学白山キャンパス(東京都文京区)で開催された「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2016」(主催:くらしの足をみんなで考える全国フォーラム実行委員会)に参加しました。今年も北は北海道から南は沖縄まで、事業体や分野の垣根を越えて、日々の暮らしをどう維持していくかなどの問題意識の高い約300人が熱い議論を交わしました。

今年のサブタイトルは、“「移動の問題」を本年で語り合おう、知り合おう、そして現場で元気に動き出そう”です。また、今年はプログラムが変わり、2日目に行われていたラウンドテーブルの代わりに、ポスターセッション(62団体が出展!)の時間が大幅に長くなりました。

ご講演される加藤先生

いつもながらの加藤節が炸裂。

1 現場で元気に動き出すための「くらしの足概論」(講師:加藤博和氏(名古屋大学大学院環境学研究科准教授))
トップバッターはもちろん!?加藤博和先生の“0.1単位”がもらえるという「くらしの足概論」。「乗務員不足によりコミバスの本数や運行日が減り、高校生が『この村に住んではいけないの?』という辛い思いをさせている高校生がいる自治体を引き合いに、自宅から出られる移動手段がないとどこにも行けないはずなのに、交通の現場では新幹線が1次交通、そこから乗り継ぐ交通が2次・3次となっている。医療に置換えて考えると、地域医療が1次。交通はまずここがおかしい。一方、物流サービスやITの進化により、おでかけしなくても用事が済ませる社会になってきているが、“おでかけが自由にできない社会”は本当に健全なのだろうか」と問題提起をされるとともに、交通政策基本法を踏まえ、「現行制度でもその気があれば『生活の足』は確保できるし、地域次第である」と述べられました。

2 事例紹介セミナー

ご登壇された御三方。

ご登壇された御三方。

初日に2つ目のプログラムは、3つの話題提供で構成された「事例紹介セミナー」。

ひとりめの話題提供者は、大井尚司先生(大分大学経済学部)。特に印象に残ったのは、「WHO(世界保健機構)の『アクティブ・エイジングプログラム』」です。ここでは、「移動」を明確に位置付けており、「高齢者にやさしい都市」を実現するためのチェックリストに、「公共交通の利用環境」(本数、目的地)だけではなく、「道路交通環境」(運転状況、駐車)なども含めた15の項目があるとのことでした。
また、移動には様々なモード(路線バス、スクールバス、乗合タクシー、高速バスetc)がありますが、これらを適材適所に、かつ多様な組合せも重要と述べられました。
ふたりめは、鳥取県日野町長の景山享弘氏による「中山間地域を支える公共交通について」。

タクシー助成制度を中心とした内容なのですが、事業者への運営補助は一切やっておらず、あくまで利用者に対する料金補助を行っています。この助成制度が平成23年にスタートした時は、タクシーは“特権階級の人が乗るもの”というイメージが強かったそうですが、自動車の運転ができない75歳以上の人など、3つの条件を満たした人への助成を行ったところ、今では誰でも気軽に乗れる移動手段という意識が定着したそうです。
また、以前は近所の人に送迎を頼んだ際のお礼などが面倒と言っていた人などからも好評を得ているとのことで、現在65歳以上の住民の約1/3にあたる480名が助成を受けられている一方、福祉タクシー車両の購入にあたっては、ふるさと納税基金を使って事業者に補助金を交付されています。
「『現町長がやった良い政策はタクシー助成制度だけだ』と言われている」と自嘲気味に話されていましたが、地元スーパーが一定額以上の買い物客にタクシーの割引券を交付するために、自発的にタクシーに相乗りし、複数人でまとめて購入する方々おられ消費行動に影響を与えているだけではなく、平成23~27年度までの高齢者による交通死亡事故件数は2件にとどまっているという効果も生んでいるそうです。
最後は、西鉄バスの西営業課課長 宮崎泰氏による「柏原三丁目の取り組み~路線バス乗り入れとバス友の誕生~」。

柏原3丁目は福岡市南区にある住宅地で、狭隘道路が多くバスの乗り入れが難しい地域ですが、地域住民の熱意によって大型路線バスの乗り入れが実現し、現在も継続して運行されているというもの。
元々、同地域からのバス運行への要望には、首を縦に振らなかったという同社ですが、路上駐車や電柱移設などへの対策を福岡市の補助を活用しながら、地域住民が積極的に取り組むことによってバスの乗り入れが実現。運行半年間の補助期間中は、ご利用目標の1日80人が達成できなかったものの、地域住民が積極的に利用することによって目標をクリアし、本格運行に至ったそうです。
成功の三要素は「地元の熱意と力強い実行力」「現実的な計画」「共通の理解」と述べられ、地域の足を守ろうという住民により「バス友」が生まれ、「あの人、今日はバス停に来ないね」などというように、コミュニティが生まれたそうです。

3グループディスカッション

グループディスカッションのまとめ

おまとめ中の大井先生

初日最後のプログラムでは、前述の話題提供を踏まえ7~8人に分かれたグループディスカッションが行われました。各グループは、セクターや分野が偏らないようにうまく混ざっており、私が参加したグループも、タクシー事業者、企業(IT会社)、行政、学生さんなどがおられました。
「コミュニティを求めて『病院』へ行くのはもう古く、移動手段がコミュニティの場になるということが印象に残った」、「自発的に動き出す住民の方々は、どのように生まれてくるのだろう」といった話題提供を受けての感想や、「バスやタクシーの融合」、「貨物に人を乗せることによって、過疎地の足を確保できないか」といった意見が出されました。

 

 

懇親会の様子

盛大に行われた懇親会。地下の学食にて。

(つづく)

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