2017年12月17日、札幌プリンスホテル国際館パミールにおいて、「道民みんなで創る! 公共交通ネットワークフォーラム」が開催されました。

高橋知事

挨拶をされる高橋知事

 

【基調講演】
「オール北海道で考える公共交通ネットワークの将来」
北海道大学大学院工学研究院 准教授 岸 邦宏 氏)

●鉄道ネットワーキングチームでの検討
鉄道ネットワーキングチームでの検討においては、以下の共通認識により議論を行いました。

○個別線区の議論はしない
○全ての線区の現状維持は厳しい

 

どの線区を守り、切り捨てるかもしれないということは文脈から読み取れます。(むしろ読み取っていただいて結構)また、議論の途中で一部の首長が安心し始めたので、「地域における可能な限りの協力・支援のもと」(維持する)という文言を追加しましたが、95%が自家用車を利用している中で、鉄道を残す意義とは何かを考える必要があります。今のところ、残すと確定した路線はひとつもありません。

●鉄道貨物
JR貨物は、札幌ターミナルの黒字により内部補助で全道の収支を黒字にしています。貨物輸送は、トラック輸送を含めて片荷輸送が問題となっていますが、解決することが難しい問題です。北海道⇔本州間で貨物に占める輸送機関の割合は、海運は90%、鉄道は10%未満ですが、これはタンカーなどのバルク輸送を含めた数字になっており、日常生活品の多いコンテナだけで比較すると五分五分です。
また、トラック輸送だけではドライバー不足もあって非常に困難で、昨夏の台風災害時も道外からトラックを調達しました。要するに、鉄道がないと北海道の農産物はどこにも送れないということです。

●地域で考えるべきことと具現化
地域が考える前に、国が方針を先に示すべきという自治体があるのですが、その考え方はまずいと思っています。観光利用の増進については、JRだけでは無理ですから、地域もやらなければなりません。そのための利用促進策は、具体的にJR北海道に要望・提案してください。
また、JR北海道の赤字200億円を道民500万人で割ると年間一人あたり4,000円です。

【話題提供】
1 (一社)北海道医師会(会長 長瀬 清 氏)
鉄道の地域医療への貢献は、次のように3つあります。
① 患者
都市部への通院の足、ガソリン代の高騰、免許返納者の増加、鉄道のような安価な移動手段が必要。
② 医師
地方は医師派遣に頼っていて、その医師たちは鉄道利用が多い。従って、鉄道は重要なインフラ。
③ 医療従事者
地方の医療従事者は単身赴任が多く、帰省などの際に鉄道を利用。ワークライフバランスの面からもみても鉄道は重要。
これらは、北海道医師会にある44支部の地方医療従事者の切実な声です。

2 (一社)北海道バス協会(副会長 森 健二 氏)
現在の道内バス利用者数はピーク時の3割程度にまで減少しましたが、次のとおり利用促進にも力を入れています。
① 函館バス:ICカード「イカすニモカ」の導入。
老朽化したバスロロケーションシステムの更新を準備中。(多言語化対応)。2018年春に稼働予定。
② 十勝圏の二次交通:2015年から始まり、バス+タクシーでめぐる旅を実施。
バスとタクシーの相互利用を促進。
③ 貨客混載:ヤマト運輸とともに実施中で、昨年度4路線でスタートし、今年度は12路線に拡大。

その一方で、道内のバス路線は6割が不採算路線で、約600路線で何らかの補助を受けているとともに、運転手不足が深刻化しています。

3 (一社)北海道ハイヤー協会(会長 今井 一彦 氏)
タクシーの役割は地域内の公共交通を担うことですが、昨今は少人数の観光も担っています。
タクシーの営業区域の必要性は、以下のとおりです。
① 運転手への地理などの基礎的教育が必要なことと、地域ごとに運賃格差があること
② 需給関係において、利用者が減少しているにもかかわらず、規制緩和により台数が増加。

(札幌交通圏はピーク時約6,800台、現在約5,600台)

その一方で、郡部では廃業も進んでいます。
インバウンド対応については、千歳→ニセコ方面への輸送を、札幌、恵庭、千歳、苫小牧の会社でもできるようにしていますし、キロロリゾートのある赤井川村にはタクシーが1台しかないので、札幌などの会社が送迎可能となっています。
我々は安全第一。もし何かあった場合、白ナンバーではどうなのかなと思っています。

4 札幌エアラインズアソシエーション(副会長 中島 喜一 氏)
飛行機は、離島などにおいても安心安全な輸送を行い、観光開発も重要な位置づけとなっています。
昨夏の自然災害では、鉄道・道路の“線”が寸断されましたが、飛行機は“点”と“点”を結べます。
人口減少社会ですが、2WAY(双方向)利用の向上を図っています。
東京から道内各地への航空機利用において、4割は新千歳空港で東京発の利用は増えています。残りの6割は新千歳以外を利用されています。これからも自然災害時での対応を行っていきます。

パネルディスカッション

パネルディスカッションの様子

 

【パネルディスカッション】
○コーディネーター
北海道大学大学院工学研究院 准教授 岸 邦宏 氏
○パネリスト
北海道知事 高橋 はるみ 氏
北海道市長会 会長 菊谷 秀吉 氏
(公社)北海道観光振興機構 会長 堰八 義博 氏
北海道旅客鉄道(株)  代表取締役社長 島田 修 氏

 

 

1 鉄道の可能性について
島田:以下の3点あります。
① 大量高速輸送:札幌圏、新千歳空港アクセス、新幹線
学園都市線はJR発足時27本/日から110本/日と大幅増。→複線化、電化による効果。
② 都市間輸送:ビジネス、観光
厳しい線区もあるが、コストが安いバスとの違いを出す。
③ 地域輸送:通学利用

菊谷:私は67歳で、以前は札幌へ来るときは車でしたが、冬道や雨の夜の運転がしんどくなってきました。ただ、JRの乗り癖がついていません。乗り慣れていないので、癖を付ける必要があります。

堰八:道内の観光客入込数は594万人(内:インバウンド283万人)で、ピーク時614万人に匹敵しています。定住人口は減ってきていますが交流人口は増やせます。そして、鉄道そのものが観光資源となり得ます。

高橋:既にお話が出ていますが、暮らしを支える/観光・ビジネス/物流/大量輸送・定時性 があげられます。
人口減少、2020年オリンピック、白老のアイヌ関連施設整備、札幌冬季五輪や、2030年の北海道新幹線延伸開業を見据えて、利用者の立場で深い関心を持つことが重要。年間、ひとり4,000円の利用を!

2 生活交通について(人口減少社会の公共交通)
菊谷:JR北海道再生推進会議有志から、議論が「時間の無駄」という文書が出されましたが、住民の思いは理屈だけでは通りません。例として、学校の統廃合があげられますが、閉校しようとすると、地域から、必ず「俺たちを見捨てるのか」と言われます。
こういう問題は、感情を抑えていかないと政争の具にされる可能性が大ですし、もめずに方向性を見出すには時間がかかりますが、思いは一つです。
大滝のガソリンスタンドは公設民営で運営しています。JRに限らず、生活圏域での公共交通網の構築が必要です。

島田:丁寧な説明をしていきますが、地域の利用については、札幌以外は高校生の通学利用が中心です。この30年間で大きく利用が減少しました。
利用促進においては、観光の面では、特に釧網線で力を入れ、点から線、線から面へと拡げていき、富良野線でも同様に取組んでまいりました。
しかし、この2路線以外は難しく、観光以外での恒常的利用や駅のにぎわい作りが重要と考えていますが、バスと列車が少ない利用者を奪い合うことは共に赤字を拡大させることになります。

3 広域交通
堰八:海外からの旅行客230万人は個人旅行化しています。以前は9割が団体客でしたが、今は半数が個人客です。満足度調査において、移動手段は道外客の3割、インバウンドの5割が鉄道利用(1回でも鉄道利用した人)となっています。
また、北海道レールパスの利用が伸びています。(販売枚数94,000枚)。
先日、稚内に行く際に利用した宗谷線の特急は、代替車両でリゾート列車が配車されましたが、先頭車からの眺望が非常に良く4時間飽きませんでした。
決してスピードだけではなく、広大な北海道を鉄道で端っこまで行けることは素晴らしいです。(他の線区がどうなってもいいということではなく)テレビ番組の乗継バスの旅では、乗り継げたが、乗り継ぎたくても乗り継げない状況はまずいです。関係者一体となって公共交通ネットワークを構築する必要があります。

島田:リゾート列車による代替は鹿による事故の影響ですが、JR発足時に年間50件だったのが、年間2,000件までに増え、輸送を脅かす事態となっています。
広域交通としての課題4つあります。
① 新幹線開業効果の拡大(在来線時3千人/日 → 5,700人/日になった)
② インバウンド輸送
③ 観光の強化
④ インバウンド対応(通訳/アテンダント/大型荷物置場の設置/案内表示の充実)
対本州のほか、対北海道も重要です。

観光列車はJR発足時から力を入れています。スキーリゾート列車については、当時、中山や日勝などの峠越えが大変でしたが、道路が改良されてスキーバスが増えた後、スキー人口そのものが減りました。
一方、夏場に富良野方面の渋滞がひどいとのことで同列車の富良野への運行、また、釧路湿原の中には車で行けないのでノロッコ号を運行し、青函トンネルでは海底駅を活用したドラえもん海底列車の運行などを行いました。
各車両の寿命が来ており、安全重視の観点と団体利用から個人利用へのシフトという観点から、身の丈に合った車両の導入を検討してます。例として、釧網線の「流氷物語号」があげられます。

高橋:道南いさりび鉄道の「ながまれ号」では、茂辺地駅での浜焼きや上磯駅での駅弁に見えるスイーツなど、地域の人たちの熱いおもてなしで、鉄旅オブザイヤーを受賞しています。また、観光列車のモニターツアーも行っています。

4 資金繰りの悪化
菊谷:2次3次交通をちゃんと作れるかどうかが重要です。作ることによって小さい町にもチャンスがあるかもしれないと考えています。伊達市は、登別温泉や洞爺湖温泉が近くにあっても素通りでした。
その一方で、駅を中心とした街づくりは難しいです。昔は駅が中心だったが、今は生活しづらい地域となっているからです。伊達駅前には二戸80戸の市営住宅を建てました。我々のような街には企業による大型資本はなく、自己投資するしかありません。

島田:30年間で大きく減った線区では、以下の課題があります。
① 車両投資-国鉄末期に導入した車両の更新
路線の再構築。残念ながら道路整備は進む。
② 維持の仕組みを作る
地域との連携が重要。お金のことばかりではなく、線区ごとによりいろいろな形でご負担していただけることもある。(除雪、踏切、駅舎の管理等)

堰八:JR北海道は瀕死の重傷で、綺麗ごとを言っている余裕はありません。死にそうなのに夢物語を語っていてはダメ。「止血」が先です。JR北海道の鉄道収入は900億円。JR東日本は2兆7千億円、J九州は2,100億円、JR四国は290億円です。

高橋:北海道としては、①JRの自助努力 ②国の実行ある支援(貨物負担の軽減、青函トンネルの維持負担の軽減、資金繰り) ③地域の実情を踏まえた取り組み が重要と捉え、実行ある支援のひとつとしては、鉄道運輸機構「特例業務勘定」を活用したいと考えています。
これは、全道の問題で、一人ひとりが問題意識を持って自ら鉄路を支える主体になっていただきたいと思っています。