【参加報告】北海道の交通を考える連続セミナー 第2回 鉄道と地域交通②からの続きです。

【パネルディスカッション】
「北海道の地域交通をどうするのか?」
◆コーディネーター 秋山哲男氏(日本福祉のまちづくり学会事業委員長)
鈴木克典氏(北星学園大学経済学部
◆パネリスト    岸 邦宏氏(北海道大学工学研究院
戸川達雄氏(北海道旅客鉄道株式会社
佐藤秀典氏(国土交通省北海道運輸局

<話題提供>
「高齢者・障害者にとっての移動とは」
松原淳氏((公財)交通エコロジー・モビリティ財団
総人口に対して、障がい者は7%、高齢者は27%、乳幼児は5%で、バリアフリーが必要な人々を約40%と考えるとマイノリティーではありません。障がいは社会環境によって作り出されるものなので、社会環境が変われば障がいがなくなるということになります。
人には非日常が重要ですが、外出することは非日常で、身なりを整えるなど人を変える効用があり、出歩くことが町の活性化にもつながります。外出する高齢者は税金・医療費を節約すると言われますが、この外出を支えるのが交通です。車の運転においては、認知機能低下による運転不適合の問題もあります。
一方、障がい者への配慮に関して、できることをやらないことは差別にあたり、できることは何かを考えていくことが重要です。例えば、無人駅での対応に関しては、駅へのインターホンの設置、車内にスロープを配備することで乗務員などが対応できるようにしたり、構内踏切を復活させて跨線橋を撤去した事業者もあります。

<問題提起>
「交通計画をどのように考えるのか?―MaaS を例に―」
秋山哲男氏(日本福祉のまちづくり学会事業委員長)
道路運送法の目的に「公共の福祉を増進すること」と書かれていますが、必ずしもできていません。JRやバスがなくなると非常に困るという人が出てきますので、交通が重要な柱だと感じています。
ライドシェアについては、uberはドライバーと利用者が登録制で行っており、MaaS(Mobility-as-a-Service)のひとつとなっています。
北海道には、天塩町で行っているnotteco中頓別町のuberの2つのライドシェアがありますが、ライドシェアの増加は遊休自家用車の有効利用があげられます。ソーシャルキャピタルは潜在している社会貢献しようとしている住民の力ですから、uberもソーシャルキャピタルの活用のひとつです。これに加え、ICTの活用があげられます。
国内のuberには、①交通空白地有償運送(道路運送法第79条) ②中頓別町のボランティアによるuber ③東京のタクシー(道路運送法第4条)による3種類があります。
既存の公共交通やライドシェアを組み合わせた地域統合型システム(MaaSの和訳)は、出発地から目的地までをスマホで検索するとあらゆる交通手段の経路・運賃・時間をわかるようにしたもので、これがMaaSのやり方です。
フィンランドに行きMaaSを所管する新設省庁などに伺いました。MaaSを始めた理由のひとつは、交通事業者の経営が厳しい状況にあるので、ビジネスモデルとして確立させること。もうひとつは、マース・グローバル社(MaaSのためのスマホアプリ「Whim」を自社開発)の社長が、76%ある自動車利用を0%にすることを考えていて、利用者に徹底した利便性を提供したいということでした。また、国は規制緩和を行い、タクシーとライドシェアを全く同じ状況にしました。
MaaSを可能にするコンセプトは「よりスマートなクルマの使い方」だそうです。ただし、MaaSは万能ではありません。地域にある移動手段を統合することなので、交通機関の統制が取れていないとできませんし、そのためシステムも必要です。また、システムを一元化することは札幌みたいな大きな街では大変な労力がかかります。

秋山:住民に正確なデータを見せることで、より深い議論につながることについてお伺いします。
岸:月形町浦臼町新十津川町で地域住民へのアンケートを行いました。このアンケートでは、あなたにとって公共交通は「何が重要か」を尋ねてみたところ、家から駅やバス停までが近いことや乗継がスムーズなことがあげられ、必ずしも鉄道でなければだめだというわけではありませんでした。
アンケートでは、鉄道が“旅情を誘う”といったようなことは測れませんが、鉄道が持つサービスレベルの客観性を定量的に測ることで、住民にとって何が重要なのかを示すことができました。このことは、合意形成を行っていく上で必要な部分だと思っています。

秋山:これからのMaaSの準備を考えたときに、バス会社と協力して行っている経験をお持ちかどうかをお伺いします。
戸川:夕張市では、路線バス、デマンド交通、タクシーへの補助、スクールバスという交通手段との組合せで域内交通を組み立てようとしています。鉄道会社だけでは思いつかないような取組みもあり参考になっています。
秋山:住民の満足度は向上していると思われますか。
戸川:高校から駅まで10分歩いて列車を待つよりも、高校の近くにある待合環境の整備された場所でバスを待つ方が良いという声を聞いています。

秋山:行政として、安全面以外での戦略は何かないでしょうか。
佐藤:数年前にバスロケーションシステムの普及について、バス事業者と共に進めてきたことがあります。

秋山:北海道の鉄道でバリアフリーを進めるとイメージが良くなると思いますが、そういった場所はどこにあるでしょうか。
松原:何か大げさなことをするのではなく、駅員や乗客が手を貸すような共助共生社会にすべきだと思います。

秋山:北海道の交通はどうしたらいいかを一言(2~4文字で)でお願いします。

松原:「公共事業ですか」
日本の公共交通は営利事業となっていることに無理があります。世界中で公共交通が単体で儲かっているのはごくわずかなのに、なぜ、日本は黒字にこだわるのでしょうか。社会全体で公共交通を支えることを考えていく必要があります。
秋山:昔、公共交通事業が黒字だった名残りだと思われます。

戸川:「地域の皆様と一体となって取組むこと」
本来鉄道は大量高速輸送を行うことが最大のメリットですが、北海道は先に鉄道ができたことなどそのメリットを十分発揮できない地域があります。その中で、会社は会社で、地域は地域で、各々発言していた部分がありますので、反省を踏まえてこのような言葉にしました。
秋山:市民と共に歩むということかと思いますが、障がいのある方とともに調査(インクルティブリサーチ)しないと、きちんとした結論が得られないという考え方に近いかもしれません。

佐藤:「最適化」
今あるものの中で何が求められ、何ができるのか、最適化を図っていくということです。
秋山:無駄をなくしていくことかと思いますが、これまでの交通は、病を多様な人が作ってきたが、これをどう治療していくかということかと思います。

岸:「責任」
連携・役割を前提としてそれぞれに責任があると思います。JRはきちんとサービスを提供する、行政はまちづくりのビジョンを示す、住民は自分たちの公共交通を残すなら使うといったことです。私は、客観的にみてみなさんに投げかける責任があるのではないかと思っています。
国の責任は、国民の生命と財産を守ることなので、市場原理で成り立たないところは支援すべきだとも思っています。
秋山:その通りだと思います。公共交通を守るということは、通院・買物に行く機会を守ることにもつながります。

(文責:松本公洋)※ボランティアスタッフの協力を得て作成。