2018年3月19日(月)北大にて、「北海道新幹線の将来を考える ~札幌開業とその先へ~」と題した講演会が行われ、約180人が聴講しました。その講演概要です。

【開催にあたって】(岸 邦宏氏)
今日は、北海道新幹線の札幌駅が通称・大東案(修正東案)に決まりそうなことを踏まえ、みなさんと一緒に北海道の交通を考えていきたいという思いで開催することとしました。新幹線ホームの位置は、個人的には現駅案が良いと思っていますが、予想される混雑具合などから大東案もしかるべき案だなと思っている一方で、建設にあたっては心配な点もあります。

 

 

【講演1】「北海道新幹線札幌開業に向かってすべきこと」
(北海道大学大学院 工学研究院 准教授 岸 邦宏 氏)

2つの案の利便性対比

認可見直し案と大東案の利便性対比

北海道新幹線は2年前に新青森~新函館北斗間が開業し、現在、長万部・小樽を経由し札幌までの区間を2030年度の開業を目指して工事が進められています。札幌まで延伸開業すれば、札幌~函館間が約1時間13分、同~東京間が約5時間1分とされています。(所要時間はいろいろな条件で変わる)
北海道新幹線の区間は260km/hで計算していますが、線形(線路の形状)は360km/h走行が可能な設計とのことなので、車両・騒音等の課題がクリアされれば、所要時間をもっと短縮できる可能性があります。
札幌~東京間は、航空機を利用すると乗継等を含めて約3時間30分ですので、新幹線との使い分けが起こると考えられます。そうなると40%くらいが新幹線を利用するのではないかと思っていて、既に函館の人は使い分けを実感されているかと思います。

現在策定中の北海道交通政策総合指針では、道内の交通を、幹線、広域、市町村内移動に分け

て考えていますが、複数交通機関との役割分担・

大東案の図

大東案に関する技術的な検討事項

共存共栄を図るべきだと思っています。道内の交通ネットワーク形成圏は、道北・道東・道南エリアのそれぞれに札幌が入る円を描いた3つのエリアに分けて考えています。
また、異なる交通機関でのゾーン運賃や、ストレスフリーな乗継を実現しているドイツの運輸連合を視野に、道内でも共同による情報提供などができないかということも盛り込んでいます。
さて、3/12に行われた札幌駅新幹線ホームの5者協議で改めて示された大東案ですが、ホームにゆとりがあることがメリットとされています。しかし、新幹線ホーム中央から5・6番線ホームの中央まで300m(徒歩6分)かかるとされ、1号車(旭川方)にある「グランクラス」から快速エアポートの「uシート」に乗換えようとすると、460mくらい(札幌駅前通地下歩行空間の両端間に匹敵)になる可能性があります。
また、高架ホームの上にかける跨線橋は技術的に問題なさそうですが、橋を重くさせないために動く歩道やエスカレーターの設置が難しいことが考えられます。階段とエレベーターは必ずつくはずですが、大きな荷物を持つ多数の旅行客でエレベーター渋滞が起こる懸念もあります。先日、学生と札幌駅1・2番ホームの朝の混雑具合を調査しました。6両編成でほぼ満員の列車から降りてくるお客さんを数えてみますと約740~750人で、新幹線の定員に匹敵する降車客が次の列車が到着するまでの数分間でホームから下りていきました。

最後のスライド

札幌開業に向かってすべきこと

最後に、北海道新幹線札幌開業に向けてすべきことは、北海道全体のシームレスな交通体系の構築として、札幌駅周辺の交通施設整備やJR北海道の路線存廃問題などがあげられます。
また、青函トンネル内の高速化や貨物列車の運行を含めた並行在来線の問題もあり、並行在来線については新幹線開業5年前を目途(あと8年以内)に決めなければなりませんが、駅前整備などの観点からもできるだけ早く決める必要があると思っています。
新幹線の札幌延伸はひとまずゴールですが、基本計画路線として載っている旭川まで伸ばすことは検討に値しますし、そのためにふさわしい札幌駅のあり方が問われると思っています。
※講演資料は準備が整い次第ホームページで公開予定とのこと。

 

講演2 「北海道新幹線旭川延伸の需要推計」
(北海道大学 名誉教授 佐藤 馨一 氏)

講演2タイトル

講演2タイトル

刺激的なタイトルだと思っていますが、残念だったのは5者協議において誰ひとり「旭川延伸」について言わなかったことです。高い理想がないから、札幌駅ホームもそれに向けた議論が深まらないのです。四国では新幹線の基本計画路線を実現させようとものすごい運動をやっていますが、北海道はやる気がありません。

札幌~旭川間(約130km)を最高速度260km/hで走行可能な単線で建設すると費用は約5,000億円、所要時間は約41分で結ばれます。
いくつもの都市を結び連合体の都市として考えるダイナポリス論を、札幌~旭川間にあてはめて考えてみます。

沿線人口の比較

沿線人口の比較

この間の輸送密度は、長崎新幹線(九州新幹線西九州ルート:建設中)の長崎~諫早間と同じくらいで、盛岡~新青森間、新青森~新函館北斗間より多いです。岩見沢~旭川間の輸送密度は少し落ちますが、それでも肥前山口~諫早間、高松~松山間を上回っています。さらに旭川で終わりにするのではなく、稚内に延伸、そして宗谷海峡を渡りモスクワやパリを目指すのです。昔、サハリンの軌間は1,067mmで日本の在来線(狭軌)と同じだったものの、今は1,524mmに改軌され新幹線より広くなっていますが、フリーゲージトレインによる運行が可能と考えており、技術的に可能とされる宗谷海峡を渡る橋は現実的には難しくとも、トンネルによる縦断は十分に可能と考えられます。

輸送密度の比較

輸送密度の比較

 

 

 

 

 

 

 

【フロアからの質問】
①個人的に新幹線を網走・根室など道内各地に伸ばすべきと考えていますが、新幹線を伸ばせた場合、貨物列車はどのようにすれば良いと考えていますか?
(佐藤)コンテナ化して、牽引される車両をフリーゲージにし、機関車のみそれぞれの軌間にあった車両で牽引すれば良いと考えています。

②他の交通機関への乗換え案内が非常に少ないと感じますが、どうお考えですか?
(岸)おっしゃるとおりで、ここをしっかりすべきと思っています。北海道版の運輸連合もこの辺りをしっかりしたいと考えていて、試験的に既に基盤のある十勝圏で行えればと思っています。

③新幹線延伸によってもたらせる地価上昇の恩恵を還元する方法は何かありますか?
(岸)難しい問題ですので、みんなで考えていく必要があるのではないでしょうか。

④札幌~新千歳空港間の快速エアポートがパンク寸前なので、新幹線は新千歳空港に延伸する方が良いのではないでしょうか?
(佐藤)新千歳空港に延伸すると、新幹線利用の比重がさらに高くなるので、航空機の利用に影響を及ぼす可能性があります。そうなると千歳市も良い反応を示さないのではないかと考えられます。

⑤大東案は大反対です。将来に悔恨を残す案だと思います。現駅ホームの上部への設置などの検討を行った形跡がありません。何か情報はないのでしょうか?
(岸)これ以上の情報はありません。

(文責:松本)